第4話 予期せぬ再開、そして…………
「これは酷いな…………」
「死後三日くらいでしょうか? 野生動物に喰われてる遺体もありますが、どの遺体も死亡原因は頭部または頸椎への鈍器による
偉丈夫の隣に立つ銀髪の美丈夫が目の前に並べられている全裸の九体の遺体を見てそう分析する。
「村を一通り周って分かったことだが、わずかだが争った形跡が残っていた。たぶん
「憶測でいいなら…………」
美丈夫はそう前置きをして自分の考えを語りだした。
「
美丈夫の推論を聞き考え込んでいた偉丈夫が男女二体の遺体を指し口を開く。
「この九体の遺体のうち二体だけ明らかにおかしい。七体は一撃で仕留められているがこの二体だけ全身に打撃痕があり、特に頭部が原形を留めていない」
「年齢ははっきりしませんが成人年齢には達しているでしょう。同じような状態の遺体ですし、この男女は恋人同士でしょうかね」
「そうか? こっちの顔の潰れた娘は成人にしちゃ胸がなぁ…………」
美丈夫の意見に対し偉丈夫がそう答える。
「私も最初はそう思ったのですが…………胸は残念ですが、腰廻りのくびれ等から成人だろうと判断しました。後は…………人種が違いますね。この
「まさか————」
美丈夫の意見に対し口を開いたタイミングでドサリという音とともに、
「これで最後のはずじゃ」
そう言って担いでいたモノを地面に下ろした樽型体形のやや小柄な美髯夫が呟く。
「全部で10体か…………。景気よく【
偉丈夫は首を振り自らの考えを振り払って魔術の詠唱、
「
「待ってください」
そう言って何かに気が付いた美丈夫が詠唱を止めさせる。
「これを見てください」
美丈夫はそう言う最後に置かれた10体目の遺体を
「そいつがどうしたんじゃ?」
樽型体形のやや小柄な美髯夫が問う。
その問いに答えずに
「…………!」
「おい…………なんでこいつがここにいるんだ」
「憶測ですが白の帝国が最近になって
それに対して美丈夫は淡々と回答する。
「また白の帝国の集団誘拐か…………困ったもんじゃ」
美髯夫がため息交じりにそう零す。
「以前にこいつの家には世話になったし放置するのも気分が悪いな…………全員生き返らせて話を聞いてみるか」
偉丈夫はそう言って樽体形の美髯夫へと向く。
「バルド。【
「まーワシは
美髯夫はそう言って髭を撫でつつ少し考えこむ。
「頑張って
小柄な樽型体形の男————
「分かった。それで頼む」
偉丈夫はそう言ったあとで別の遺体を見る。
「では
そう言って美丈夫は自らの
「取りあえず生体情報を拾って【
偉丈夫もそう言うとゴソゴソと
「死後三日だと成功率は結構ギリギリですね。しかし高価な触媒を用いてまで目的の人物以外を蘇生する意味があるのでしょうか?」
美丈夫の物言いは
「こっちの男女も知人かよ。運が良いのか悪いのか…………」
偉丈夫のその独り言に美丈夫が反応する。
「頸椎が折れてるのが
美丈夫の言いようにひとしきり笑った後で偉丈夫がこう呟く。
「しかし
偉丈夫と美丈夫は思い出話に浸りつつ、高難度の魔術を
▲△▲△▲△▲△▲△▲
「ここは…………何処だろう?」
見回してみても記憶にない場所だ。それに寝床がふかふかだ。心地よすぎてそのまま意識が…………。
▲△▲△▲△▲△▲△▲
「はっ!」
どうも本当に意識が飛んだらしい。先ほどまで窓から明かりが射し込んでいたのだけども今は月明かりだけのようだ。薄暗い。
事態を把握すべく起き上がろうとするも倦怠感が酷くて四苦八苦しながらなんとか上体を起こした。
この感覚は数日前にも体験した事がある。
「そうか……。僕はまた死んだのか。でもどうして、誰が蘇生を?」
死んだ直前の記憶がまるっきりない。最初に死んだときは、学校全体を覆ったと思われる強制召喚に巻き込まれて、降り立ったこの異世界の開拓村で
あの時のボロボロの刃の
すっごく綺麗な神秘的な少女とおっさん達が偶然全滅した僕らを発見して蘇生し、ある程度動けるまで面倒を見てくれたけど、神秘的な少女が去って既に5日ほど経過してる筈だから……。
そう言えば僕の持ち物がない。
制服を着ていた筈なのに今は白い
ここは無機質な小さな部屋だ。三畳あるかどうかだろうか? ベッドに物書き用の机と椅子があり、ベッドの下は覗いてみると収納のようだ。人の気配は…………流石にこの部屋には居ないが外に誰かいるようだ。場所は分からない。少なくても開拓村の家屋にこんな部屋はなかった。軍事教練の一環で泊まった防衛軍宿舎に似ている。まさかとは思うけど夢でも見ていた? それともこれも夢なんだろうか?
「いたい…………」
おもいっきり自分の頬を引っ叩いてみた。
とにかく思い出そうと唸っていると───。
ひとりのイケメン偉丈夫が入ってきた。
「起きたのか? 依頼でこの開拓村に来たらお前さんを含む見慣れたやつらが転がってたから取りあえず蘇生したんだが、何があったんだ?」
そう言って湯気の立つ木製のカップを差し出す。
このイケメンな偉丈夫を僕は知っている。
三年ほど前に我が家に突然現れて二年ほど食客として滞在していた異世界から来た知人だ。一年ほど前に元の世界に帰ったはずなんだけど……。
カップを受け取り口をつけてみると牛乳をベースに何かを溶かし込んだのかややドロっとした触感の飲み物だ。甘みがあり普通に飲める。ひと心地ついたので幾つか確認しようと口を開く。
「ヴァルザスさんお久しぶりです。まさか再会できるとは思ってもみませんでしたが……」
「俺もまさか死体で対面するとは夢にも思わなかったよ」
そう言ってその偉丈夫————ヴァルザスさんは笑った。
あれ? そういえばさっき見慣れたやつら? 複数って事か?
「他には誰が死んでたんですか?」
「お前の幼馴染の
10人か……残りの35人はどうしたんだろう? 初日の夜に誘拐された可能性が高い
「月齢と時空波長の兼ね合いで今日中なら【
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