第3話 裏切り
あれから三日経過した。
ようやく僕らも自力で食事をとったりできるようになった。昨日まではトイレとか
この三日間は僕にとって、この世界の情報収集に良い時間だったと言える。
ただ自称マリアベルデさんとはあまり話す機会が得られなかった。その代わり
ただそこで得られた
曰く、まず体力、次に体力、その次に根性が必須。
曰く、極潰しの最終就職先。
曰く、男臭い職種で意外にお金が溜まらない。
曰く、一部の市民からの認識は犯罪者予備軍。
曰く、五年続けられれば立派。
曰く、利用する便利じゃん感覚で消耗品感覚で扱われる。
曰く、仕事の中身は多岐にわたるが、ろくでもない仕事ばかり。
曰く、運が良ければ英雄に祭り上げられる。
曰く、運が良ければ一発逆転。
曰く、運よく十年くらい続いたら開拓村で嫁付き警備員しながら農夫で余生を過ごせる…………かも。
そんな感じの内容だった。後は自己研鑽の出来ない者は長く務まらないとも言われた。
多くの
話を聞かせてくれた
男臭い職場と言われるとおりに女性
稀にではあるが僕らのように強制召喚に巻き込まれたものの何らかの理由で本来呼び出される場所から弾かれた者がいるという。言語などが通じない事もあり立ち回りに気を付けないと奴隷堕ちの未来しかないので気を付けろよと忠告された。
その日の夜は、僕が集めた情報を生徒会長の藤堂さんの口から告げられた。
皆のざわめきを眺めつつこれからどうしたものかと思案していると————。
「また考え事?」
そう言って話しかけてきたのは
「うん。これからの事をね…………考えていたんだ」
「私は帰れなくて良かったかなと思ってるんだ…………」
そう言いながら
「なんでまた?どうみてもこっちの世界の方が生きにくいと思うよ」
僕の方に顔を寄せ、
「顔も知らない男と結婚して子供を産まされる義務から解放されるんだよ。最高じゃない。
その
特権を享受し義務をこなさないで
ちょっと話を変えることにした。
「そういえば
「さぁ?」
「そもそも私たちは仮面夫婦ならぬ仮面カップルだし」
「え! なんで?」
「なんでって…………誰かさんが
そう言ってジロリと僕を睨む。
はい。
「やっぱり何もわかってないんだ…………」
そういうと
何のことだ?
▲△▲△▲△▲△▲△▲
更に五日が経過した。
自称マリアベルデさんは何かから逃げるように慌てて去っていき、事後処理の終わった
僕ら45人はと言えば幾人かが片言ではあるが現地語を体得し、身振り手振りを交えればなんとかなりそうな状態であった。
食料や水などは僕や
井戸水があったのだが、初日に何人かがお腹を壊してしまい基本的には飲料水としては使っていない。
上級生たちが中心となって今後どうするかを会議しているが僕らは参加していない。
古典ラノベをこよなく愛する同志たちは、
「|われらの
ここ数日で思ったのは僕はなぜ竜也を無二の親友と思っていたのだろうか? という事だ。少なくても集団転移前は親友だと胸を張って言えたはずだが、今はなぜか疑問形だ。やはり
僕は一人今後の活動方針をあれこれと検討していた。
武家の中でも上位の格式の家に生まれた僕には遺伝子情報から算出された最も最適な婚約者が既にいる。
帰還方法自体は分かっている。
【
実際にヴァルザスさんもその魔法で異次元の壁を越えてるわけだし。
問題は使い手がどれくらい居るのかが判らない事だ。使い手は大都市なら居そうな気もするし
軍資金に関しては【
こっちに残るつもりの
「行くなら早い方がいいし、決行は今夜かな」
そう呟いてしまった。
幸いなことに古典ラノベ好きの同志たちには聞こえていなかったようだ。
▲△▲△▲△▲△▲△▲
「さて、そろそろかな?」
生徒会長から明日中に仕度を整えて町に向けて出発するとの発表に何やら盛り上がっていたが夜半を過ぎるころには皆が寝静まり僕は
不意に不穏な気配を感じて振り返って木刀でソレを受けた。
「な、なんで…………」
月明かりに照らされたその人物は、名前は憶えていないが
「すまないが俺たちのために死んでくれ!」
鍔迫り合いのような状態で力比べが続く。名も知らぬ上級生の得物は村の周囲を覆っていた柵に使っていた木材だ。長さも太さもこちらの得物より大きい。そのうえ体格も膂力も相手が上では話にもならない。
一瞬力を抜き相手の攻撃を
運よく一撃で倒れたようで起き上がる気配はなかった。そこで気が付いた。
「なんだ…………これ…………」
最初は気が付かなかったが裸の男女が倒れている。共に頭部を鈍器で一撃のようで二人とも大きく陥没している。だがそれより驚いたのは明らかに身包み剥いだような形跡が————。
ガツッ
首元への激しい痛みとともに僕の意識は薄れていって、最後に「すまない」と聞こえた気がするが…………。
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