#2-5

「ということで、沖島朔人が仲間になりました! よろしく!」

 大声でそう言う沖島くんに、私たちは目配せしながらぱちぱちと弱い拍手を送る。ちいさな木造の部室内でその声はとても響いて、正直ちょっと耳が痛いんだけれど、ことの顛末をきいた後ではなにも言えないし、むしろちょっと歓迎したいという気持ちが湧いてくるのだ。

「沖島くん、怪我は大丈夫?」

「お、なになに、空田ちゃん。心配してくれてる?」

「心配するだろ、そりゃ。なあ空田さん」

 沖島くんの言葉に、近山くんがそう言って笑う。

 沖島くんは本当にほとんど無傷だったようで、ひとつだけ言っていた怪我と言える怪我は、手のひらにできたささくれくらいだったらしい。

「土田くんはまだ病院だから、しばらく部活には参加できないんだけど、それでもいい?」

「なに、それでもいい、って。いいに決まってるじゃん」

 本当に不思議そうに聞き返してくる沖島くんに、私も首を傾げる。「だって、土田くんと沖島くんは親友なんでしょう?」

「ん? なんだそれ、気持ち悪い」

「へ?」

「俺と土田が親友なわけないだろ。友達ですらない。むしろ、ない。絶対にナイ」

「え、だって、そう言ってたのに」

 そう私が追及すると、沖島くんは少しの間を置いて――たぶん記憶を遡っていたのだろう――、ああ、と頷いた。「あれはまあ、その場のノリ。あんな根暗ムッツリ野郎」

 ――本当に土田くんのこと、ムッツリって言ってたんだ……

 変なところに脱力してしまって、私と近山くんは顔を見合わせる。なんだか気が抜けてしまったけれど、まあいいかと笑って流せば、沖島くんはそんな私に「空田ちゃん、こころちんって呼んでいい?」と妙な提案をしてきた。

「ぜったいにやめて」

「ケチだな」

 そういってにんまり、いつものように笑った彼に、私は頬を膨らませた。

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