第11話 胸騒ぎの種

〇月〇日

反撃宣言から1か月、戦線は油田基地や鉱物資源都市を中心に大きく衰退した。第一作戦を遂行中、エスケイパーの船同士の落とし合いによって撃墜された船が我々の主要エネルギー基地に落ちてきた。基地の防衛に努めていた仲間は皆死んだ。燃料切れを狙っていたことがばれていたのはわかっていたが、その為に一緒に空へ飛び立ったエスケイパーを蹴落として燃料を取りに来たやつらは本当に人間なのだろうか。我々は墜落した船から人質を取った。これからやつらのことを詳細に聞いていくつもりだ。

- 反撃軍中枢兵の報告書より -






大きく薄暗い部屋の中には、一体の大きなキラメティアがいた。

「なんだよその顔は」

そのキラメティアはチームの人たちを知っているようだった。

「アラランダ、なんでこんなところにいるのよ!」

「なんでだだと?簡単さ、エスケイパーの末裔であることに恥を知らないやつらに絶望したんだ。正確に言うとエスケイパーに、だがな。」

「あなただって末裔じゃない!」

「だからだ、俺は自分がエスケイパーの末裔だということを知って絶望したのだ。最悪の人種の血が流れてるだなんて。恥だ。しょうがねえな、お前らみんなまとめて俺の鉄槌を食らいやがれ!」

大きな声で叫ぶと、キラメティアのアラランダは椅子から立ち上がり一気に間合いを詰めてきた。

「危ない、よけろ!」

リギーダが叫ぶも、シャラザの肩は拳にあたってしまった。それと同時にチャルは壁に強く吹き飛ばされた。


バコーン


「シャラザ、大丈夫かい?」

「グハッ....何とか、大丈夫よ。」

「ルーガット、シャラザを安全な区画まで運べ。」

「わかった。」

「なんだよ、もう半分いなくなっちまうのか?そうはさせねえよ!オラアア」

アラランダはルーガットとシャラザに向かって再び突進の態勢に入った。

「危ない!」

リギーダは瞬時に鉄板の簡易防壁を張る。


バキーーーーーーーーーン


「今のうちだ、ルーガット!」

「あとは頼んだ。」


そういうと、ルーガットはシャラザの周りを警戒しながら部屋の外に出て行った。

「くそっ、逃がしたか。まあいい、お前ら2人を叩き潰すまでだ。」

「ルーガット、来るぞ!」


「これでもくらいやがれ」   ヒュン


アラランダはリギーダに向かって突進をした。


「チャル、いまだ!」

リギーダが合図をすると、アラランダに向かって巨大ライフルを発射した。


ズドーーーーーン


「グッ、てめぇ、やってくれたじゃねえかよ。許さねえ、許さねえぞ。」


アラランダは貫かれた体を気にも留めず、チャルをターゲットに変更する。

「うおおおおおおおおおおおおお」

暴走したアラランダは床や壁など関係なくひたすら殴り続け、肩や腕に装備されているライフルを四方八方に発砲する。


リギーダとチャルは防核を張る。


カカカカカカカカカカン


ブン ブン


「チャル、あいつはもうだめだ。精神が侵されている。始末するしか先へ進む方法はない。弾幕が一瞬切れた瞬間を狙うぞ。接近したらそのまま爆弾の取り付けに移れ。」

「了解。」


その時、アラランダの動きが止まった。

「ぐっ、な、なんでだよ、なんで動かねえんだよ。」


「チャル、今だ!」

リギーダの合図とともに、巨大なライフルを発射した。


ズドーーーーーーーン


「ぐっ、ぐあああああああ....」


バッターン


大きな体は大きな音を立てて崩れ落ちた。


リギーダはアラランダに近づき、念のためとどめを刺す。


バンバン


「こいつはな、もとは俺らと同じ局員だったんだ。ある時機密ミッションを受けたあいつは、とある組織に乗り込んだんだ。その中で何があったのかわからねえが、ミッションは失敗したらしい。その時を境にあいつは変わったんだ。」


「そうだったんですね...」


リギーダは、アラランダの死体に水をかけて祈った。


「キラメティアになるとな、人間という存在を捨てることになるんだ。意識があって言葉を話しても人間ではなくなってしまうんだ。他の生物は持っていないが人間だけが持っているもの、それは心だ。キラメティアになり人間という存在を捨てると、心を失い始め、最終的には精神を飲まれてしまうんだ。そうなると人間にはもう戻れない。いままでそうなった仲間は数人だが、なにか大きな組織が関与しているに違いないと俺は思っている。パジャランダよりも大きな組織があるんじゃないかと思ってるんだ。」


その時、ルーガットとシャラザが帰ってきた。

「リギーダ、チャル。無事か?」

「ああ、なんとかな。それより、シャラザの肩はどうなんだ。」

「骨にひびが入ってるようだ。」

「そうか、ルーガット無線で応援を呼ぶからシャラザをひとまず先に返す。」

「了解。」

「ごめん、みんな...」

「気にすることはない。死んだら終わりだからな。」


ザザー 「こちらチームプラタナスのリギーダだ。応援を要請したい。場所はターゲットの甲板に固定してある偵察艇だ。」


ザザー 「了解、こちらサージャルタンのチームホリー第一部隊隊長ダンダーシャだ。偵察艇を確認した。これより応援を向かわせる。」


「よし、偵察艇まで戻るぞ。」

「了解です。」



彼が変わった理由はなんなのだろうか。

私たちがしていることは本当に正しいことなのだろうか。




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