第6話 着任間もなく風は安堵を運んできた。
地上はもうじきダメになるだろう。どこもかしこも見えない狂気であふれかえっている。その原因へは何kmにもわたって立ち入り禁止区域に指定されている。
政府はどうしても情報を流すわけにはいかないらしい。
- ある調査員の日記より -
「たいへんです!正体不明の船が、こちらに向かっています。無線の反応もありません!」
「わかった、今すぐ向かう。」
「局長、私も同行します。」
「じゃあ今回は俺に同行してもらう。武器はそこの棚からライフルを持っていけ。」
棚にかけてあるライフルには、通常のライフルよりも威力をあげるためのギアがたくさんついている。
「タジャル、状況報告を頼む。」
「望遠鏡で観測した時点では、距離50km、時速67km、高度2000m、風向きは東の風です。さらに機械人(キラメティア)の反応が複数体確認されました。」
-機械人(キラメティア)とは、人々が空へ飛び立ったのと同時に自分の体を機械化した元人間たちだ。王都の追っ手に抵抗するために、人体を違法改造によって機械化したのである。-
「そうか、対機人兵用ライフルを用意しろ。」
-対機人用ライフルとは組み立て式の巨大ライフルで、射程は20~30kmあり械人の装甲を一撃で貫通することができるが、その反面銃弾は通常のものよりも大きく重い。組み立ては改良されて簡略化されているものの、大きく分けて10個のパーツを運ばなければならない。高圧力をかけるため銃が暴発した場合ほぼ助からない。-
バチア局長は、棚の下の黒くて頑丈そうな箱を取り出した。
「チャル、お前はこれを使え。前の現場では狙撃の名手と呼ばれてたらしいな。頼んだ。俺らは機関部の破壊を試してみる。船の動きが遅くなったら各個撃破、
残り物が出たら俺らが乗り込んで全滅した後機関部を完全に破壊して沈める。時間がないから制限時間は20分ぐらいだ。頼んだ。」
「揚陸船は用意してあります。バチア局長、出発するので来てください。」
「お前はここに残れ、ここなら機械人を仕留められる角度だ。揚陸船の中だと安定しないしな。」
そういうと二人は揚陸船へ乗り込んでいってしまった。
それまでに私はこのデカブツを組み立てなくてはならない。
ガチャリガチャリ、ギリギリ...カチカチ、プシュー
「よし、圧力管理器は正常に動く。あとは通信を待つだけだ。」
なぜいきなり船を沈めないかというと、機械化していない人間が乗っている可能性が捨てきれないからである。さらに、できるだけ資源を回収するのも仕事に一つであるからだ。私たちの給料はたしかに税金の一部から支給されているのだが、市民の税金の負担を軽減するためにも集めた部品を都市の大手修理屋や主要金属加工会社に売っているのである。
しかし私はここに疑問を抱いている。
はたして、私たちが売り払った部品の何%が新たな違法船の部品となって大空を羽ばたいているのか。矛盾した職業なのではないかと思っている。
ライフルのレンズに、小さく船が見えてきた。
「このサイズだと、小型レベルか。おそらく機械人は10対いるかどうかぐらいかな。」
すると、部屋の無線に入電が入った。
「こちらバチアこちらバチア、チャル、聞こえるか。機械人を8体観測した。おそらく機関部にいるのも合わせると10体程度だ。注意をそらして船の外におびき寄せておくからそのうちに殲滅してくれ。」
「こちらチャル・クランティック。了解、ただいまより射撃を開始する。」
部屋を出て、鉄の足場の上にライフルを固定した。
レンズをのぞき込むと、風邪を読み、初めの一発を打ち放った。
ドカーン バキン、プシュッ、シュー... バタン.....
約25㎞先の機械人めがけて弾丸は一直線に飛んで行った。
被弾した機械人は大穴の空いた体を起こすことができず、その場に倒れた。
弾丸を補充するにも時間がかかる一発一発交換しなければならず、銃の後ろについている大きなカートリッジを毎回開けなくてはならない。
「こちら狙撃手。次弾発砲します。」
「了解した、こちらも1体破壊に成功。」
残り時間は15分ほどだ。
風向きが変わる前に仕留め切らなくてはならないし、武装した機械人の射程に入った瞬間この都市に被害を被ってしまうとこになるからだ。
「炸裂団を使う。注意せよ。」
「了解した。陽動船にターゲットから距離を取らせる。」
「こちらバチア、既定された距離の確保を完了した。」
「こちらチャル、了解。これより発砲を再開する。」
無線を切った後、もう一度スコープをのぞき込み機械人を狙う。
3体の小隊らしき塊に向かって発砲。
ボッカーン.....ドドドドドド..........
炸裂団は見事に3体の胴体を破壊した。
ここでさらに入電が入った。
「甲板に確認できる個体の殲滅を確認した。これよりターゲットに乗り込み船内の個体を撃破する。このまま船の速度を落とためにしたのプロペラの破壊をしてくれ。」
「了解。これより船の船体パーツの破壊に移ります。」
言われた通り、次は船についているプロペラを狙う。小さいものから順に潰して速度を調節しないと、船は沈没してしまう。
弾を通常弾に切り替えて発砲。船はわずかに傾いたが、反対側のプロペラを狙撃するのはかなり高難易度なことだ。
しかしチャルは迷うことなく船の先に狙いを定めた。
その角度で発砲すると、みるみる船を通り越したついでにプロペラを破壊している。
そしてさらに入電。「こちらバチア、船内の敵を殲滅した。これより資源回収をした後帰還する。」
「了解。」
今回のミッションは終わったようだ。
数十分後。
隊員たちが乗った船は上の港に帰還した。
「今回の任務は完全達成だ、ご苦労だった。」
その入電によって一気に安心感を取り戻したのであった。
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