第4話 厄介な依頼・2

しばらく窓口横の掲示板を見ていると、ギルドのドアが開いた。

子の町の振り返るとそこには先ほど本屋にいた薄汚い老人が立っていた。

「おや、ばれてしまったのか。お前さん、わしには興味もなさそうな顔をしておったのにな。ナーナのことは見破ってしまったようじゃな。お前さんが優れているのか、ナーナがまだまだなのか。」

やれやれというような顔で話しながら受付の方へ歩いてくる。

「すみません、子の振り返ると街のギルドマスターの顔はまだ知らなかったので。」

「そうか、わしの名前はメロクリス・ゾージャックだ。まあそれはいいとして...お前さん、わしに見せるものがあるじゃろ。」

メロクリスは手をくいくいとして、本を渡すようにジェスチャーをした。

私はジャンジャにもらった汚い本と『工学大全』の本を渡した。

「実はな、この本には一切工学についてかかれていないんじゃよ。この本は、お前さんのような子供を試すための仕掛けが施されていてな、ようはからくりの仕込まれた受験票なんじゃ。今回は発動しておらぬな。お前さんには真実を見ることができる強い勇気と、信念を貫ける強い意志がそろっておるのじゃ。」

「はへ~チャルさんすごいですね...私にはせいぜい休暇を大いに満喫する技ぐらいしかないですよ~」ナーナは目を輝かせてこちらを見た。

「まぁ、お前さんは何かと苦労の多い人生を送っていたと聞いておるしの。で、問題はそっちの汚い本じゃ。その本についての文献を探してみたのじゃが、手掛かりになりそうな情報は見つからんかったわい。」

「この本のこと、ラインさんから聞いたんですか?」

メロクリスはうなずいて返事をした。

「とりあえず本のことはここで終わりじゃ。で、ここからが本題なのじゃが、お前さんは前の派遣先では三等勲章保持者だったようじゃな。勲章は空中都市ギルド連盟で共通の物が使われているのでの、この町でも効力を発揮でるぞ。」

「チャルさんってどんな任務についてるんですか?」

「私は過去に都に住めなくなった人々が自分の家だけのためにつくったけれど今は住む人がいない船を取り壊したり、それを不法に占拠しようとする集団を逮捕する仕事をしています。」

「はぇ~なんか、任務重大ですね。」

「放置していると操作不能な船がいつ空中都市に衝突するかわかりませんからね。それに、船を改造すれば戦艦にだって出来てしまうので危険な集団に渡すわけにはいかないんですよ。もしも空中都市が落とされでもしたら、地上で人間が住むことはできないので誰も生きては帰れませんからね。」

「それは確かに大変ですね。」

「三等勲章保持者から武器の保持を許可されることは知っておるな、しかし一等勲章からは魔道器具の使用も許可されるのじゃ。」


私が生まれる20~30年程前、世界の空中都市で人口増加が問題となり、王都や主要都市の土地の値段が上がった。大都市に住めなくなった人々は、都市から追いやられてしまったため、不法に船を作成し、空へ飛び立った。もちろん都市の警察に見つかった船はその場で没収となった。それでも、逃走に成功した多くの船はこの空を今もさまよっている。昔、廃船が都市の機関部に衝突し都市が沈没した事件が起きた。それをきっかけに作られたのが、廃船管理局 (Management Bureau of Abandant Ships) 通称(MBAS: エムバス)だ。

上層部はもっと深刻な問題を抱えているようだったが、私にその話は回ってこなかったのでよく知らない。


「お主の着任を確認したから今日の用件は終了じゃ。」

「ありがとうございました。そういえば、何の試験だったんですか?」

「それはまた今度話す。とりあえず今日は解散じゃ。」


街へ戻ると、何やら人混みができていた。

メロクリスと二人でその人混みに向かうと、中心に同じ格好をした男が数人立っていた。



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