第21話:春休み

 朝日が飲んで寝落ちした目に染みてきて、薄らと目を開ける。


「あれ…?」ベッドだ。若干二日酔いだし、ちょっと寒いし、もう少し寝よう…。そう振り返ると


「っ!響…!」響が横で寝ている。いや、正確には服を着ていない響が横で寝ている。つまり…そういう事だよね。こうがいなくなって燃え尽き感があって、何かしようと実行委員活動に参加して、幼馴染に再会して、幼馴染の優しさに溺れたのか。バカじゃん私。


「詩…おはよう。」乱れた髪をかきあげて柔らかい笑みを浮かべている。


「お、おはよう。」どんな顔をすればいいんだろ。


「まだ寝てようよ。」


「う、うん。」


「昨日の事覚えてる…?」


「えっと…。」お酒で記憶を無くすことは基本無いのに思い出せない。


「なんだ、覚えてないんだ。」少し寂しそうな目をして、犬が甘えるようにふわふわの髪を私の胸に押し付けてくる。


「ご、ごめん。なんとなく察しは…ついた。」


「ふーん。でも覚えてないんだ。」


「ごめん。」


「昨日詩は泣き上戸になって、酔いつぶれそうな時に寂しいって言うからさ。」


「うん。」恥ずかしい。


「なら、付き合おうって話になったじゃん。」


「え…ええ!!嘘…響その冗談は流石に―――」その後の言葉は私の口を塞いだ響の口に飲み込まれた。息苦しくて涙目になった私の口を離し、私の上に跨り


「嘘だと思う…?」と笑う幼馴染は見たことないような恍惚な表情で私を見下ろしていた。


「ううん。」


「やっぱり詩は理解が早くて助かるよ。」と軽く口付けをしてくる。




 私はこうに会いに行きたかった。だけど、他の子が寂しがるから会いにこないでくれと言われた。もうこうに会えない。こうの居なくなった寂しさを埋めるかのように、春休みはバイトと実行委員以外は彼の家に入り浸った。ぽっかり空いた穴を埋めるように彼を求め、彼は掴みどころのない態度で私を掻き乱した。


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