第19話:別れ

 お父さんが来た。仕事は大丈夫と聞くと、どうにでもなるから大丈夫と。


 お父さんもこうの事は息子のようにかわいがっていたし、息子が欲しいっていうのはお父さんの願いでもあったのは、詩も知っている。


 児相への引き渡しの日、こうはただ黙っていた。お父さんもなんとか状況を打開する方法を試したが、やっぱり学生の詩には、責任が取り切れないと判断されるらしい。


「こうくん。元気でな。」無言でうなづくこうに、


「私、必ず迎えに行く。約束するから。」とぎゅっと抱きしめたら、こうは腕で拒否する。


「こう?」


「詩さん、ありがとうございました。」


 一回も詩のことを見ずに、こうは去っていった。

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