第15話:幼馴染
あけましておめでとうと今日は言う日だよとこうに教えた。こうもきちんとした格好をさせて、初詣みたいなのに行く。お父さんもちゃっかり準備して…どんだけ楽しみにしていたのと思わず聞くと、息子ができたみたいでと、嬉しそうに言っていた。親戚のおばちゃんに絡まれるから苦手なんだよなぁと、私は憂鬱具合を隠せないというのに、お父さんは気楽だねと言おうとしたが飲み込んだ。
「あらぁ詩ちゃん!お姉さんになって!」そんなところに親戚のおばさんが来た。最悪だ。両親はいない。
「あけましておめでとうございます。ありがとうございます。」
「で、弟君いたっけ?」いねーよ。なんで親戚なのに知らねーんだよ。と思い切りつっこみかける声を押し込め、
「知り合いの子預かってるんです。」と普通にこたえる。
「本当!知らなかった!」言うわけない。という言葉がのどに差し掛かったが、飲み込んだ。
「可愛いわねー!」こうは本当どこ行っても目をひき、みんなに可愛いだのかっこいいだの言われる。確かにな。顔ちっちゃいし、目は二重だし、鼻はしゅっとしてるし、イケメンかな。
「詩ちゃんに似てるわね。」似てねぇーよ、似てるわけ。こんなに美形じゃねぇーよ。さすがにつっこみの我慢の限界を迎え、大人を軽くあしらい、こうを連れてさっさと切り抜ける。苦手だ…お母さんとお父さんが出てくるまでしばらくかかりそうだなー。そう思いながらこうに暖かい飲み物を渡す。
「詩!」
「え、響!久しぶり!」
「いつ以来?」
「えーっと、中学の卒業式以来じゃない?」
声をかけてきた彼は詩の幼なじみ。秀才で地元では有名だ。名前は
「弟産まれたの?」とこうを見て、こんにちはと声をかけてくる。
「なわけ。」お前までそれを言うかというあきれた声がのどから漏れた。
「なら産んだの?」
「バカなの?」短所は勉強できる癖に抜けてる所と思っている。それも計算なのかもしれないとも思っているけど。
「ならどうしたの?」
「知り合いの子預かってるだけ。」
「ふーん。まぁいいや」そして幼なじみだから、何にも言わなくても察するとこがめんどいが、今はすこしありがたいと思いつつ、なんでかこうと遊んでくれることになってワイワイ振り回して遊んでる響を見る。
「響、腕とれそうで見てて怖いんだけど。」聞いてない…。こうを一通りかまってくれた後、ジュースまでおごってくれる。遊び疲れて待ちくたびれて寝てしまったこうを抱っこしながら
「詩痩せた?」
「女の子に太ったとか痩せたとか言うなし。」
「あ、ごめん。」
「いいよ、いつものことだし。」
「詩さ、本当は預かってるんじゃないでしょ?」ほら、鋭い。あほなのかそれすら本当は演技なのかいまだに分からない。
「ん?響はこうのことなんだと思ってるの?」
「拾ったとか?ありえないか。…ってまじ?」
「なんでいつも何も言わなくても分かるかなぁ。」
「んー、詩だからかな?」
「わけわかんない。」
「で、拾ったんだ。相変わらず優しいね!」
「優しくないよ。ただ、見逃せなかったし、一緒にいたいと思うから預かってるだけ。私のワガママだよ。」
「そこが優しいんだよ。ねぇ保育園の時のこと覚えてる?」
「うーん、断片的には…。」
「保育園の時に僕らさ迷子になったの覚えてる?」
「そうだっけ?」
「そうだよ。忘れたの?」
「うん。」
「えー。まじか。あのね、暗くなっても帰れなくて、星が出て来て僕怖くて泣いちゃってさー、その時に詩が"お空の星はみんなを見てるんだって"って。覚えてないの?本当に?」
「ごめん」
「そっか。でも僕さ星も僕らを見てくれてるんだろうけど、星だけじゃないと思うよ。」
「何が言いたいの?」
「ううん、深い意味はないよ。」こいつのこういうとこが困る。真意を探ろうと目を見るがにこっとしてごまかされる。
「あ、そーだ。」と手帳の紙に連絡先を書いて渡してくる。相変わらず字くそきれいだな。そして綺麗に手帳から紙やぶるな。女子力の塊を見せつけられてちょいといらつく。
「LINEとメアドと電話番号と住所!」
「LINEだけで良くない?というか、今どき手書きって。」思わず笑うと
「いいから、よかったら登録しといてよ!」と強引に押し付けられた。
「分かった、ありがとう。」
「んっ…うた…。」
「こう起きた?」
「うん。」響からこうを預かる。
「響。」
「親来た、またな。」と去ってった。ほら、意味わかんない。でももらった紙を眺めてると心が暖かかった。
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