第13話:無戸籍

「なぁ、詩。飲まないか?」お父さんと飲むの初めてだ。てか度数弱めの用意してるけど、私、貴方の娘なんだから、なかなか強いと思うけどなぁと、お父さんの手元の焼酎の一升瓶を見る。お父さんはかなり飲んべぇだ。どこにこんだけアルコール入るんだよと言いたくなるぐらいに。


「なぁ、こう君のことだけど。」


「ん?」


「体力無さすぎじゃないか?」


「え。」考えたこともないや、てかあのぐらいの年ならそんなもんじゃないのと兄弟いない詩にはわからない


「多分家からあまり出ずに育ったんじゃないかな?」


「なんで?」


「まず東京の都心に住んでたとしても雪見るのが初めてなのはあり得ないぞ?」


「そうなの?」東京都心でも雪降るんだ。私の大学は山奥だから雪降るんだと思ってた。


「勉強はさせてもらってたぽいし、多分小さいけど小学生ぐらいだろ?学校行ってないなら無戸籍児じゃないか?」


「むこせき?」


「無戸籍な。本当漢字弱いな…戸籍が無いってこと。」


「戸籍ないとかできんの?」戦後じゃあるまいし。今は令和だぞとジュースのようなお酒をのどに押し込む。


「出生の時に届けなければな。」へー。日本も案外適当なんだな。


「だから親がわかんないの?書類上は存在してないから。」


「そうだろうな。」


「こうの親今何してんだろうね。」


「そうだな。」


 なんでこうを置いていったんだろ。


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