第11話:変わること、変わらないこと

 翌朝─


 心配した友達や先輩がくる。一応検査されまくって今から出費が怖い…親にこんなこといえねぇよ。


「親御さんに連絡は?」と教授。


「してないです。」


「そもそもこう君のことは?」


「伝えています。それでこの前口論になって…」


「言えないのか。」言えるわけ…。さすがにその言葉は飲み込んだ。薄暗い天気…。とりあえず3日の入院生活が終わり家に帰る。バイトは一個に戻した。また元通りかと思っていた頃…どっから聞いたのか一番会いたくない人が来た。


「何してんの?」一番会いたくない人…それは親だ。どっから聞いたのか入院の話まで聞いたそうだ。それで、家族会議になる。こうのことは 養護施設に預けろ。育てられるわけない。 自分の子供じゃないし、学生なんだから。 倒れてまで育てる意味あるの?と。 …正論だ。だけど、こうと離れたくない。こうやって一方的に言われ続けるのはいつものこと。大学生になったら…成人したら…って期待しても親は親だ。逆らえない。いつかだれかが言っていた。親は親で子は一生子だと。あぁ、こんなに必死になっても親は親の常識とか考えを押し付ける。視界がにじむ。だめだ、ここで負けるわけには。親には逆らえないかもしれない。それでも…


「それでもっ…。」


「それでもって何なの!?」


「それでもっ…私はこうと離れない!離れたくない!だってもう家族だもん!もう私20才の大人だよ!子供じゃない!考えたよ!本当は施設の方がさみしくないんじゃないかとか!でも…一緒にいるって決めたの!!」


「でもねっ!」これは徹底抗戦するしか────


「やめないか。」


「お父さん?」黙り混んでいたお父さんの一言で空気が変わる。


「詩は覚悟持って決めたんだな?」


「うん。」


「詩は例え周りの理解を得られなくても彼を手離さないつもりか?」


「うん。」


「ならお父さんは応援するよ。親御さんが見つかるまで資金援助もする。」


「お父さん…。」


「でもね!!そんなこと私は認めない!」勢いよく飛び出すお母さん。いつもお母さんはそうだ…。自分が一番正しいって。胸が重く押しつぶされ息するのさえままならない。


「お母さんはお父さんが説得してやる。」と肩に手を置かれる。


「お父さんっ。」お父さんはいつもお母さんの言いなりで、意見なんてしているのを見たことなかった。


 そのお父さんがなんて説得したかは分からない。でも、お母さんも折れてくれたみたい。冬休みはこうと一緒に帰省だね。そう思うともしかしたら世界は簡単に変わってくれるのかもしれないと詰まっていた息を吐きだした。


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