第10話:自己嫌悪

 バイトを一つ増やした。 9時にこうを寝かして急いでメイクして10時から2時まで繁華街のバーで夜勤。3時くらいに寝て7時くらいに起きて急いでこうも起こして朝ごはんつくって、登校。勉強時間が空きコマぐらいしかなく、こうの相手をしつつレポートや課題をするというキツキツの状態。でもやるって決めたからやらなきゃなと気合は充分あった。


「最近、うーたん痩せた?」


「え、そう?自炊ちゃんとするからかな(笑)」


「痩せたというよりやつれたよ。」


「んなことないっしょ!」そうよく言われるけど、忙しいけど疲れてないし。決めたことだから、なんとかしなきゃな。


 そうやって1ヶ月くらいたった。バイトも慣れてきてだいぶ楽になった。食欲ないけど、もともとちゃんと三食食べてなかったけど、こうを預かってから食べるようになったからまぁ大丈夫。期末レポートや期末テストを意識する時期になる。そして一番の問題は…帰省。正月に成人式あるから帰省しなきゃ。でも…こうは?だれかに預けるの?だれに?ひとりにさせるの? 実家に連れてくのは…できない。


「どうやってもできないんだよなぁー。」と頭をかかえる。


 誰かに預けるといっても、みんな帰省してるし。なんかそれじゃ自分の都合で振り回してる気がするし、頼れる人なんていないし。うーん、どーしよ。とりあえずこうにいつものように本の読み聞かせをして、いつものようにバイトに行く。いつものようにバイトして家に帰る。しなければいけないこと、考えなければいけないことがたくさんで頭が爆発しそうになる。帰宅する途中から頭痛い…ふらふらしてるなとふらつく足を前に進める。風邪ならこうに移しちゃいけないし、寝て治ったらいいな。とか考えつつ、なんとか家に帰り着替えた後から急に異変は来た。視界が歪む、息が苦しくなり立ってられない。廊下で膝をつく。


「っ…はぁっ…はぁっ」声が出ない。あれ?こう?こうが見えた気がした。


 あれ?夢でも見てるのかな?寝たのか。あそこにいるのはこう?あ、ランドセル…小学校に通ってるんだ。こうのランドセル姿を見て思わず涙腺が緩む。


「うた!」ん?


「♪とぅいんくるとぅいんくるりーらぁーすたー、はうあわんだーわっちゅーあー、あっぷあーぼーぶざーわーるどそーはい、らいくあーだいあもんいんざーすかぁーい。とぅいんくるとぅいんくるりーらぁーすたー、はうあわんだーわっちゅーあー。」キラキラ星ちゃんと歌えるようになってたんだね!


「…よこ、やまさんっ。」ん?だれだろ?


「…横山さん」ふわぁっと声の方向に向くと体を急に持ってかれる感じがした。


「横山さんっ!聞こえますか?」あれ?ここどこだ?見覚えない白い部屋。まぶしいくらいの照明。外すら見えない部屋。いろんな音が聞こえてくる。ここどこだ?


「横山さん!ここどこか分かりますか?」もしかして


「病院…?」


「そうですよ。運ばれてきた理由分かりますか?」運ばれてきた?病院に?あれ?手を一生懸命握ってきてるのは…


「こう?」


「うたぁ…。」


「弟君が救急車呼んでくれたんですよ」


「こう…が。」


「じゃあ先生から説明がありますんで…」


「あの、彼をちょっと外してもらっていいですか?」


「じゃあこっちに行こうか。」


「うたぁ…」


「こう。もう大丈夫だよ。だからちょっと待っててね。」不安そうなこうの手を握り返す。こうがいなくなり説明を受ける


「過労ですね。3日ぐらい入院してもらいますが、成人してるとはいえ、学生なので親御さんへの連絡はを勧めます。親御さんは?」


「親は離れて住んでいるので。」


「一応連絡をすることを勧めます。」


「…分かりました。」とりあえず3日ぐらい入院するならこうをどうしよう…それが先に頭にあった。その日はこうも病院に泊まる。講義の欠席連絡を教授にする。


「うた。」


「ん?」


「うたのとこで寝ていい?」


「いいよ。」点滴に繋がれてない方にこうをいれる。


「心配かけてごめんね。ありがとう、救急車呼んでくれて」 「うた、いなくならないでね」


「大丈夫。いなくならないよ。」泣いてるこうを抱きしめる。何してんだ自分。ごめんね。本当にごめんね。そうここでつぶやき目を閉じた。


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