ブラックアマゾン ーThe Future Deliveryー

エムノ

ブラックアマゾン

 よく晴れた日曜日の朝、家のインターホンが鳴った。モニターを確認すると見慣れた制服が玄関前に立っていた。どうやらアマゾンで注文していた物が届いたようだ。駆け足で玄関に向かいドアを開ける。サインを済ませて荷物を受け取る。部屋に戻りカッターを取り出す。そして開ける。いつもの流れだ。商品をダンボール箱から出す。ロゴが笑っている。相変わらずダンボール箱が少し無駄にでかい。これまたいつも通り箱を片付けようとしたその時、何かが箱の底に入っているのが見えた。だった。

 

  広告かな?珍しいなと思って中身を確認した。そこには...

『いつもアマゾンをご利用頂き誠にありがとうございます。この手紙は一部のユーザーにランダムで配布しております。さて、当社では少し先の未来の商品を注文出来る新サービスを開発中でございます。あなたはとても幸運です。このサービスのテスターに任命致します!』

と書かれていた。嘘だろ?と思った。しかし、公式から送られてきたものだからな...と思い早速スマートフォンを取り出し書かれていたQRコードを読み込んだ。黒いページに飛んだ。

「ブ...ブラック アマゾン...?」

サイトのタイトルを見て、少し怖くなったがその感情は直ぐに消えた。まだ見たこともない魅了的な未来の商品の画像が沢山並んでいたからだ。某清涼飲料水メーカーの飲み物や、大手家電メーカーの音楽プレーヤー、有名ゲームの最新タイトルまで... 画面をスクロールする度に購買意欲が唆られる。そうこうしているうちに好きな歌手のアルバムにたどり着いた。もちろん発売するなどと言った情報はどこにも載っていない、全く未知のアルバムだ。とても気になるし、へんな物を買うよりは良いだろうと思いあっさり信用して購入ポチしてしまった。購入したことをSNSに投稿しようと思ったが、注意書きに

『他人に情報を漏らした場合、罰則が科せられます。』

と記載されていたので、やめておいた。

 

 それから一週間後、注文したはずの商品が届かない。代金はすでにコンビニで支払っている。問い合わせるべきかとも思ったが電話をかけるのが苦手なので、問い合わせは諦めた。どうするべきか迷っているうちに、どうせ数人しか見てないし、ばれないだろうからと思い、到頭SNSにこのこと存在を投稿してしまった。すると、その1時間後にインターホンが鳴った。やっと届いたかと思ってモニターを確認した。そこには期待通り見慣れた制服が映っていたがどこか違和感があった。そんなことはどうでも良いと思って急いで玄関に向かいドアを開けた。すると、制服が思い切り突入してきた。驚いた勢いで倒れてしまった。

「あ...危ないじゃないか!」

と制服に向かって怒鳴った。よく見ると制服はサングラスをしている。すると、そいつは宅配業者の制服を脱ぎ捨て一瞬にして黒い制服スーツ姿になった

「お...おまえはだれだ!?」

と訪ねるとそいつは痺れるような低い声で

「私はペナルティーキラーだ!規則に基づき違反者である貴様に罰則死刑を与えに来た!」

「ぺ...ペナルティーキラー...」

足が震えてきた。それでも、咄嗟に反論した。

「しょ...商品は?いつ届くんだ?散々待たせておいてこれはひどいんじゃないのか?」 すると

「何を言っている?貴様、もう一度よく招待状を読んで見ろ!」

そういってそいつは例の招待状を突きつけてきた。

「ここには注文できると書いてあるだけですぐ届くとは一言も書いてないだろ?」

確かにその通りだった。

「そ...そんな屁理屈を言われても...」

「だまれ!すぐ届くことを常識だと思ってる貴様が悪い!」

低い声が妙に説得力を増している。

「いまさら後悔しても無駄だ!貴様にはこの場で死んでもらう!」

そういってそいつは、銃口を向けてきた。逃げようとしたが体が言うことを聞かない。涙が頬を伝い始めた。体中が震えている。

「覚悟はいいか?死ねぇ!!!」 

銃声が響いた。


 電話が鳴った。

「任務は完了したか?」

「はい。無事、違反者を殺害しました。」

「ご苦労であった。これで何人目だろう?あえて発送時期に関して明記をしなかったが... まさか、ここまで何人もが何も疑いもせず、確認も取らず、焦り、容易に事を拡散させるとは。時代の進歩とそれにまんまと操られている人間がなんとも愚かだ。ぐははは...!」

 

  「はぁ...はぁ...」 夢だった。息は上がり、シーツは汗でぐっしょりと濡れている。洗面台で顔を洗いコップ一杯の水を飲み干した。

「ゆ...夢か...ひどい夢だったな。」

ソファーに腰をかけTVをつけた。時刻は朝10時だった。

「今日には届くだろうか?」

実は実際に3日前に注文した商品がまだ届いてないのだ。

「まぁ、気長に待つとするか。」

様々な物が便利になった世の中で常識だと思っていたことは本当に常識なのだろうか?もう一度考え直そうと思った。

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