6.

「何であんたがここにいるんだ? ご丁寧に家財道具揃えて」

 PM7:45。貴希のマンションの廊下。大きなトランク二つとボストン三つに囲まれて、晴都が憮然として言った。

「みぃも一緒だ」

 同時にエレベーターから飛び出てくる碧の軽やかな足音。

「はーるとぉ! 買ってきたよ、缶ビール。まりやぁ、“いちばんしぼり”と“モルツ”とどっちが好き? 冬物語はあたしのね♪」

「……バドワイザー」

「そんなややこしーの無い無い無い。まりやのへそまがり!」

 碧が口を尖らす。


「あのね。上の階の人がお風呂の水出しっぱなしでね、外出しちゃったの。でね。晴都の部屋ボロだから、雨漏りがすごくて。ごめんねまりや、とりあえずここしか思いつかなかったの」

「お前っ、そんな楽しそうに言うなっ!」

「だって雨漏りなんて、何年も見てないもんっ♪」

「俺は木村のところへ行くつもりだった!」

「きむさんの部屋は、幹ちゃんとヒロタカでもういっぱいでしょ? いいじゃない。しばらく厄介になりなさいよ。知り合いなんだから。ね?」

 二人の話を聞いているのかいないのか。ジーザスとじゃれていた貴希がぽろっと、こう口にした。

「じゃ、さ。いっそみんな一緒に住んでしまお。覚醒のメンバー&みぃ」

「……は?」

 晴都の目が点になった。碧は恐る恐る聞いてみる。

「鞠矢……覚醒計画を…バックバンドにでもする気?」

「だーれがこんな奴と!!」

 貴希と晴都、同時に叫ぶ。

「で? その突拍子もない発想の魂胆は」

「だって、俺ヒロタカちゃんも、きむさんも、大好きだもん。きっと幹ちゃんともうまくいくよ。で、みーんな一緒に住めたら楽しいねって。この部屋で狭いならロフトでも借りてさ。ワリカンが苦しいなら稼ぎの率で家賃分けてもいいじゃん」

 こいつ、ヒロタカの能天気の悪影響受けたな…晴都は頭を抱えた。

「じゃ、男6人に紅一点になる碧の立場はどーなるっ?!」

「だーいじょうぶ、メンバーはみんなそんなやつじゃないし。いっちばん危ない晴都のことは俺が見張るから!」

「てめーのほうがよほどあぶねぇ!」

「気に入らないなら、雨漏りのアパートに帰ることだね」

 貴希は、ふふんと鼻を鳴らした。

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