7.
高層マンションの一室、貴希が自分の部屋のドアを開くと、
「やあおはよう、午前様!」
と喬木の爽やかな声が迎えてくれた。
「どーせ、夜遊びの仕方なんて知らないからね、お前は。帰ってくるしかないだろ? 事務所には、実家から呼ばれたってごまかしといたけど、今度はちゃんと“遊びに行く”って言うんだぞ」
「ほんとに俺のマネージャーですか? たかぎさんってば」
「プライベートには首を突っ込まないことにしてるんだ。それに」
手際よく、“コーヒー牛乳”のように甘いカフェオレが出てくる。
「お前がプライベートで動いたのなんて今回が初めてだからさ、よくよくのことなんだろ?」
「…たかぎさん、ラブソングってさぁ、俺、今までちゃんと歌えてた?」
「何だ? 急に」
猫舌の喬木はやっとブラックコーヒーに口を付ける。
「僕は、鞠矢のラブソングは大好きだよ。ひとりよがりじゃなく、ちゃんと、聞いている女の子ひとりひとりを大事に包み込んでいるみたいで、さ」
「俺はたった一人です。自分を恋してくれる子みんなに嘘はつけない」
独り言のような貴希の呟きを黙って聞いていた喬木が、不意にこう言う。
「鞠矢、次のアルバム作詞やってみないかって話があるけど?」
「え…と、えー?」
貴希の傷心の中で何かがコツンと弾けた。
OTONAを気取って
スキャンダラスなkissで固めた芝居より
息が止まりそうな純愛がとても欲しいよ
鞠矢貴希「スキャンダラスより、純愛(スキャンダル)」より
“ALBUMリリースの日、僕はある計画を打ち明ける”
鞠矢貴希のNEW ALBUMのキャッチコピーである。
そしてその日は、天城晴都率いる“覚醒計画”のデビューの日でもある。
《act2 『君へのRESISTANCE』に続く》
BE WITH YOU :Act1 子守歌が聞こえない 琥珀 燦(こはく あき) @kohaku3753
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