第11話 腕立て伏せ

 ぷにぷに……


 私は自分のふくよかなお腹に指で突いてみたら、こんな擬音語が出てきた。


「お前、最近ふとりすぎじゃね?」


 口の悪い友人が冷めた目で私の腹を見やる。

 とは言え、友人の言う通りで学生時代は運動部でがっしりしていた私の体も今ではぽっちゃりとした中年太りで見る影もない。


「そうだな。ちょっと腕立てしてみるか……」


 私はそう言ってうつ伏せになり、腕立ての準備をする。


「ちゃんと百回やれよ」

「わかってるよ」


 友人の言葉に心外そうに返した後、私は腕立てを始めた。


「ふんぬぬぬぬぬ! ぐぐぐぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅ! くぬぬぬぬぬぎぎぎぎぎごぐがぶげがぐぬぬぬぬんんんん!!! じゃばぶぼごぉくきぃこばぁ」

「……おいマジか?」

「がごぼごぉぉぉ!!! になぁぁぁぁぁぁ!! ばがへこぱくヴぃふぉとつごくぅぅぅぅ!!」

「まだ腹も床から離れてないんだぞ?」

「ごなむぅぅぅ!! ぼヴざじぜぞぉぉぉおぉ!! ほかまなくぢゅりゅぅぅぅ!! ぴゅぽわらちゅにぁ」

「たった一回やるだけでそこまで?」

「じゃおえういんヴぁぁぁぁぁ! おぴんっといあのヴぁいぃぃぃ!! なへぱいえぇぇぇぇぇぇ!!」

「何語?」

「いぁおいあえんのぉぉぉぉ!! ふぃへいそぽぉぉぉぉ! えろまんがぁぁぁぁぁぁ」

「エロ漫画?」

「じゃぜいうぅぅ! あいうまないん! おっぱいぷりんぷりん!」

「何故それが出てくる?」

「じゃいちぃぃぃ! うなえがぐぅぅぅ! なてのぱ! ぼよよんぼよよん!」

「ダッダーン!?」

「まヴぇぇぇぇ! ぱねぽあんぱいじぇんいぃぃぃ! ぬをぉぉぉぉぉぉ!!」

「勢いだけは凄いんだけどなぁ……」

「えうなおぉぉぉん! ぱのあえん! 愛に気付いてください!」

「俺は支えないからな?」

「んふぁいいぃぃぃ! えなおヴぁいおあヴ! うっせぇうっせぇうっせぇわ!」

「お前が思うより不健康だからな?」

「っだおいういえぇぇぇ!! あうぱうえんヴぁうねんあぁぁぁ! 一切合切凡庸な!」

「お前は凡庸以下だからな?」

「あけねいヴぁぁぁぁ! ぱあヴぉうえぱヴぉうぅぅぅぅ! 強くなれる理由ぅぅぅぅぅ!」

「それ知ってるなら、もうちょい行動に移そうぜ?」

「さいうぽえうぅぅぅ! あんぷヴぇといえなじぃぃぃ! なえおいおえぇぇ!! 走馬灯に酔うぅぅぅぅ!」

「絶対に走馬灯の先まで行ってないか?」

「こあいあえおぉぉぉ!! んぎあえんヴぁっぁぁ! おいえんぁぁぁ! 床と繋がるお腹ぁぁぁ!」

「それは床から離せ」

「いぇぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 ずぎゃぁぁぁぁん!!


 神々しい光を放ってるんじゃないかってぐらいの勢いで、ついに私の手をまっすぐ立った!


「はぁはぁはぁ……」


 苦しそうに息をする私は大量の汗を顔から流し、爽やかな顔でこう言った。


「百!」

「一回だよ」


 そう言って友は私の頭をはたいた。

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