第7話 書き出し練習1

 書き出しのパターン


 大きな視点から小さな視点と

 小さな視点から大きな視点の二つのパターンの書き出しを作りなさい



 大きな視点から小さな視点



 かつて……このデッカ大陸にはエンペラー帝国があった。

 その帝国は大陸の半分を征服し、大陸のあらゆる国の礎となったが……愚帝「オロカス」の悪政が元で一夜のうちに消えてしまった。


 帝国はバラバラになったが、それで平和になったわけでは無かった。


 むしろ、土地を支配していた領主たちが互いに覇を唱えてシノギを削りようになり、ますます混乱していくだけだった。


 二転三転とする勝者の円舞曲(ワルツ)に後世の歴史家は面白がって研究し、ゲーム会社はこぞって英雄を女体化する時代だが、当時を生きる人間は必死だった。

 


 そして今……そんな荒れ狂う戦乱の波に飲み込まれようとする村があった。


 ザシュッ!


 中年の男が一人、むさくるしい革鎧に身を包んだ男たちに殺される。

 それを見た少女が殺された男の体へと縋るがすぐにむさくるしい男たちに引きはがされる。


「お父さーーーーーーん!!!!」

「ほら、お前はこっちだよ!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁ」

「ほらあ脱げや!」



 小さな視点から大きな視点



 それはあまりに突然起きた。


「襲撃だぁーーーー!!!」


 村はずれに住むオルドンの声を聞いてアーネストは目を覚ました。


「……襲撃?」


 起きたばかりの自分の脳はまだぼーっとしているが事態は切迫しているようだ。

 慌てて宵闇の暗がりの中、手探りでベッドから起きてクローゼットを開く。

 中に入っているの普段着に使っている粗末な麻の上下服だが、まずはこれを着る。

 麻のズボンを取り出して履こうとするのだが、何故かうまく行かない。

 苛立ったが、すぐに理由がわかった。


「上着じゃねーか!」


 慌ててズボンの方を取り出して履いてから上着を着る。

 そしてすぐに部屋に無造作に置かれている革鎧に手を取り、体へ取りつけていく。

 最後に手甲を取りつけてから、鞘ごとテーブルの放り出していたブロードソードを取る。


 そのまま外に出ようとするのだが、すぐに立ち止まり大事なことを思い出す。


「アニー愛してるよ」


 そう言って鏡台に置いてある指輪に投げキスをする。

 死んだ幼馴染の形見だ。


「行くか!」


 そう言ってアーネストは部屋の外に出た。

 これが小さな視点から大きな視点。

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