第4話 銃撃戦
お題
一人は追いかける側でもう一人は追われる側。
路地裏を探していると二人は窓ガラス越しにばったり出会い、追われる側はカーテンを下ろして逃走を仕掛けます。
そこで追う側が窓ガラスに銃弾を撃ち込んで跳弾で相手の逃走を防ぐ。
私の名前は如月耶依(きさらぎ やえ)
私はある男を追っている。
私は俗に言う賞金首と言うやつで、日本でも2025年に採用されるようになった仕組みだ。
移民受け入れをするようになった日本も物騒になり、賞金稼ぎという職業が成り立つほどになった。
世も末だとあたしは思う。
私は拳銃を手にゆっくりと廃ビル内を歩き回っていた。
昔は銃を持つのも難しいって話しだけど、今では許可さえとれば簡単に銃を所持できるようになっている。
お陰で私のような女でも賞金稼ぎでやっていけている。
「陰鬱なビルね……」
かつては『六本木ヒルズ』と呼ばれたセレブご用達の超高層ビルも、あまりに危険になった東京を放棄して名古屋に首都を移転して以降、空きテナントが増えて、ついに廃ビル化したのだが、余りに強固なこのビルは壊すのも難しいため、このように放棄されている。
(そのせいで、やばい連中がたむろするようになったのよねぇ……)
あろうことか、勝手に電気を通してポンプで水をくみ上げて、上層階を不法占拠して住んでいるのだ。
さながら現代の九龍城ともいえる。
だが、そんな危険なヒルズもその大きさゆえに空白地帯も多い。
私はゆっくりと廊下を歩く。
革ジャンにジーパンというラフなスタイルだが、薄手の防弾ベストを着用しており、小口径ならば防げるし、大口径でも大幅にダメージは軽減できる。
とは言っても危険なことには変わりない。
ゆっくりと誰も居ない廊下を歩いていると近くに気配が感じた。
(……誰かいる……)
数歩先にあるロッカーから気配を感じて、ゆっくりと近づく女。
そして、ロッカーに手を開けて勢いよく開けた!
「……! 」
中に居たのは汚れた服を着た5歳ぐらいの少年だった。
物騒になった東京ではストリートチルドレンも問題になっている。
肌の色からして明らかに移民の子である。
「脅かさないでよ……」
私はジェスチャーで『行け』と伝えると、少年はたたっと走って去っていく。
本来なら不法移民はすぐに通報しなければいけないのだが、あたしは別に移民管理局じゃない。
心の中で言い訳をして、ふと隣の部屋を見た。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
窓越しで賞金首の男とばったり目が合ってしまった。
余りに唐突だったので動きが止まる私だが、相手も唐突だったので固まっている。
「くそっ! 」
慌てて銃を構えようとする私!
だが先に動いたのは賞金首の男の方だった。
カシャッ!
ブラインドを下ろされて、部屋の様子がわからなくなる!
だが、私は窓ガラスを割って撃った!
ガシャン! ドンドンドン!
窓ガラスの破片が落ちる時間も無く、私の銃弾はブラインドを突き抜けて部屋の中へと入っていく!
私も女だてらにただ賞金稼ぎをやっているわけじゃない。
私には瞬間記憶能力と言うのがあって、一度見ただけで全部を覚えてしまう。
一回部屋の中を見ればどんな状況かわかるし、相手がどこにいるのかもわかる。
ピキュンピキュンピキュン!
部屋の中を跳弾する音が聞こえる。
私の予想が正しければ三回跳弾して奴の足に当たるはずだ!
「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!! 」
ドタンッ!
男の悲痛な叫び声と共に大人の男が倒れる音がした。
狙いたがわずに男に当たったようだ。
私は悠々と部屋へと入る。
「女と思って甘く見ないでよね。あたしは狙った的を外したことが無いのよ……」
そう言いながらうずくまっている男に近寄る。
「ブラインドで隠したぐらいじゃ、あたしは的を外さない。ついでに言えば三回も反射させたのはわざとよ。威力を落としておかないといけないからね……」
そう言って私は男に近づいて手錠を掛けようとして……その手が止まる。
当たったのは男のお尻の穴だった。
お尻から血を出して号泣する男。
「何てやつだ……俺の尻の穴をねらって、尚且つ死なない程度に跳弾させるなんて……」
狙ってない……
私はそんなこと狙っていない!
そう叫びたいのだが、微妙に言い出せない空気。
「刑務所に入るから広げておいたわよ」
「ちくしょう……」
私は気まずい気持ちを隠しながら男に手錠をかけた。
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