どうやら私は異分子のようです
「むむむ。この溢れ出る威厳からなぜ察せないのですか。先程も言った通り、私たちこそここをくぐる者の魂の形に見合った魔銃を授ける神。つまりこの国において最も偉い存在なのです」
「最も、本来は声をかけるだけで直接姿を見せることはないのです。ただ、お前は例外なのです。なにせ、この世界における『
「『異分子』⋯⋯」
異分子と言われる原因は何となくわかる。たぶん、私が前世の記憶を持っていることが原因だ。本人たち曰くこの双子幼女は神らしいので、私の秘密などとっくにばれているのだろう。
「違うのです。前世の記憶を持ち別の世界からやって来る存在⋯⋯『転生者』と呼ばれる者はお前以外にもいるのです。確かに数は少ないですが、そこまで珍しくはないのです」
「お前を『異分子』と私たちが呼ぶのは、お前の魂の歪さ故なのです。前世の記憶も持たず、それでいて『死』への欲望、関心だけはそのままにこちらへとやって来るなど、普通じゃあり得ないのです。異常です」
え、何この双子。私の心読めるわけ? なんも喋ってないのに普通に会話してるような感じで話進めてきたんだけれど。あと、人のこと好き勝手に異分子とか異常とかディスるのやめてくれない? そんなこと言われても私自身そこら辺よく分かってないんだからさ。
「私たちは、お前がこの世界にやって来た時からその動向を監視していたのです。本当はもっと早く接触したかったのですが、我々は神。人の世に姿を現せば大混乱が起こることは必須なのです」
「そこで、今日この時を待っていたのです。魔銃を渡すこの瞬間は、我々が唯一人間に直接干渉が出来る時。ここならば、誰にも邪魔されることなくお前に『警告』と『助言』を贈ることが出来る」
「『警告』と『助言』⋯⋯? 貴女たちは、私に一体何をしてほしいのですか?」
首筋に汗がにじむ。無表情を崩さない双子が忌々しい。今まで、特に意識したことがなかった私の過去。それが今、大きな不安となって私に襲い掛かる。この子達は、一体何を知っているんだろうか。そして、何を求めているのか。なんだか、とてつもなく大きな波に飲み込まれそうな予感がする。
「⋯⋯この世界は、本来は定められた
「そして、その影響により魔族が本来以上に力をつけてしまったのです。このままでは、この世界は魔族によって滅ぼされてしまうのです。マジやばいのです」
「そんな時現れたお前という『異分子』は、私たちにとっての『脅威』であり、『希望』なのです」
「私たちからお前に贈る『警告』は、お前が少しでも『脅威』の側に傾くようなことがあれば、全力で排除するというモノ。そして、『助言』は⋯⋯現実世界に戻ったら、『シャルル・スプリングフィールド』という桃色の髪の少女を見つけろというモノ。彼女は元々の運命における『
「ちょちょ、ちょっと待って!? いきなり色々話されてもわけ分からないんだけれど!?」
もうさっきからずっとパニック状態だ。いきなり運命とか世界の話をされてもどうしろっていうのさ。そりゃお嬢様言葉も崩れるわ。
私はただ、死を迎えることが出来ればそれだけでいいんだよ。私にとっては私の視界に入る範囲が世界のすべてだ。運命とは死刑台へと続く道だ。『脅威』とか『希望』とかになれるような器を持った人間では決してないんだよ。
「安心するのです。お前は既に、無意識のうちに運命を良い方向へと導いているのです」
「お前は自分らしく突っ走っていけばいいのです。無理に意識してしまえば、それこそお前が『異分子』である意味がないのです」
「⋯⋯私、本当に自分のためにしか行動しませんけれど。それでもいいのならば、一応頭の片隅くらいにはさっきの話を置いておきます」
うう、なんだか久々に今すぐにでも死にたい気分だ。もう、ホントあれこれ考えるのは苦手だから今まで通り好き勝手生きるからね!? 変な邪魔とかしないでよね!!
「お前の邪魔など、する意味ないのです。期待してますよ、『異分子』」
「さあ、そろそろ目覚めの時なのです。お前の魂に見合った魔銃はちゃんと渡してやるからそこは安心するのです。あ、桃色の髪の少女と話すのを忘れないようにするのですよ?」
「え、ちょ待」
「「それじゃ、バイバーイ」」
⋯⋯はい。どうやら問答無用であの双子が居る場所から追い出されたみたいです。私より先に教会に入っていた子達が驚いたような顔でこっちを見ている。
本当になんだったのさあの双子⋯⋯。言いたいことだけぶちまけてさんざん混乱させた癖に結局こっちの意志に任せるとかなんじゃそら。それなら私に話す意味あった?
そして、さっきからこっちに突き刺さる視線が何だかすごく妙な感じだ。何をそんなジロジロみてるのさ君たち。私の顔に何かついてるの?
あ、コルト王子見つけた。私の顔見るなりめっちゃ目見開いたんだけれど、ホント何なのささっきからこの周囲の反応。わ、すごい勢いでこっちに向かってきたぞ?
「り、リリィ、どうしたんだその髪の色!? それに瞳の色も⋯⋯」
え? 私の髪の色って、そりゃあお父様譲りの金髪で、瞳の色は青っていう典型的な貴族令嬢カラーリングなはずだけれど。
⋯⋯あれ、おかしいな。視界の隅にちらっと見えた私の髪の毛の色が、真っ黒に変わっている。は? これどういうこと?
「おおお王子、私の髪と瞳の色、何色になってるんです?」
「どっちも真っ黒だ!! 一体なにがあったのだ?」
いや、それこっちの台詞なんですけれどー!? 一体どういうことよ!! 返してよ私の金髪ぅぅーー!!!!
「さあ、これで全員無事洗礼を終えたようじゃな。それでは、早速魔銃を出してみようではないか。胸に手を当て、『
どうやら全員教会に入ったみたいで、ネゲブ校長が魔銃を出す方法を皆に語っている。でもこっちはそれどころじゃないんだよ!! ベクターとお揃いの金髪がぁぁ⋯⋯。
と、とりあえず落ち着こう。この髪のことについては後でネゲブ校長に聞いたら何とかなる⋯⋯かもしれない。うん、何とかなるはず!!
いったん髪と目のことは忘れて魔銃を出してみようじゃないか。王子は既に金色に光る立派な魔銃を出しているし、周りの子達も次々に魔銃を出している。後ろの方が少し騒がしい気がするけれど、今は自分のことに集中しなきゃ。えーっと、こうだっけ?
「―『装填』」
胸に手を当て、ネゲブ校長に言われたとおりに言葉を紡ぐ。すると、胸から何かがすうっと抜けるような感覚と共に、手にずっしりと重みが乗っかった。
「⋯⋯は?」
あの双子に目をやられてしまったのか? さっきからなんか変だ。私の髪が黒かったり。私の手に乗っかっているモノだったり。
黒一色に染められたボディ。つるりとした触感の長い棒の先には、半月状の刃がくっついている。私の身長よりも長いくせに、ほとんど重さを感じないソレは⋯⋯どこからどう見ても、銃ではなくて『鎌』だった。
「⋯⋯『死神』」
誰かがポツリとそう呟いたのが聞こえた。うん、黒髪に黒い瞳、そして大きな鎌持っているとか私でも死神連想するよ。
『お前の魂に見合った魔銃はちゃんと渡してやるからそこは安心するのです』
別れ際に双子の片割れが言った言葉が頭をよぎる。てことはあれですか。私の魂に一番合った形がこの死神スタイルってことですかそうですか。
ハハハハハ。⋯⋯あー、今すぐ死にたい。
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