第7話 目覚めた先で
目を覚ますと、そこは見知らぬ世界であった。
アンジェラ・レストは自分の瞳に写る世界を、おぼろげな意識の中で見つめた。
見えるのは林。そう林だ。横たわる雑草群が奥深くまで広がり、そのさらに奥には森のような。木々が立ち並ぶ光景が存在している。
わすかに視線を上に向けると太陽が姿を消した空の姿があった。暗闇の中にうっすらと光る夜の灯屋こと、月の姿がある。
ここはどこで。どうしてここにいるんだろう。――とアンジェラは疑問に思う。
しかしその答えは後ろから聞こえた水の音と、振り向いた先にある川でわかった。
すぐにアンジェラは自分の置かれている状況とそれに至るまでの事実を整理した。
つまり、アンジェラは流されてきたのだ。
キースによって下水道に身を投げ出し、そのまま水の勢いとともに外へと出た――というわけだ。
それがわかったアンジェラは体を起こそうとして、あることに気付いた。
それは、彼女の隣で横たわる男について――であった。
「キース」
うつ伏せのまま。ぐったりと動かない男の名を、アンジェラは唱える。
「ねえ、キースの思惑通りだよ。やったよ、脱出できたよ。キース」
アンジェラはキースの体に触って、一つの真実を伝えた。
だけど。共に脱走劇を果たした隣人が動くことはなかった。だから、その事実が。
まさか、嘘でしょ。――と。アンジェラを焦らせる。
「嘘でしょ、ねえ、待ってよ。ねえ!」
現れた救出者が死に瀕していることを悟ったアンジェラは必死に彼の体を揺する。
「ねえ、しっかりしてよ! せっかく外に来たんだから! ねえ!」
そう強く訴え、アンジェラは隣人の意識を引きだそうと躍起になった。されど、されど男からの返答も反応もない。あるのは――死に瀕しているという事実。
「……なんで、ここまでするの」
その事実を見たアンジェラ・レストは、問わずにはいられなかった。
「ねえ。なんでそんな傷ついてまで。教えてよ、ねえ……」
今にも泣きだしそうな声で、アンジェラは問いかける。
そう、理由を聞いていないのだ。
姉からの依頼だの、姉の願いだの、は聞いた。しかし、肝心の彼からの返答はない。自らの命を犠牲にしてまで、そこまでして動く――彼の本心は。聞いていない。
「……ごめんキース。ここまでされたら、理由を知りたいよ」
しかし。この記憶辿りの魔法使いは知っていた。
それを知る手段はあるということを。
だからこそ、彼女は現れた救世主の頭に触れ、瞳を閉じた。
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