第9話 僕は何とか生きている。
初めての戦いに出て、いきなり友軍の男に犯されそうになって3か月。
何とか生きている。
最近は周りの事が見えるようになってきた。
朝に一回、昼に一回、夕方に一回。小規模の殺し合いを延々と繰り返してる感じ。
何が目的かは全然分からないけど、よくも毎日こんなくだらない事が続くものだと思う。
何のためにこんな殺し合いをしているのか。
「考える暇があるなら敵を殺せ。」
クラウスは相変わらず殺せしか言わない。
「ヤらしてくれれば、剣の稽古を付けてやる。」
ジュリオはヤらせろしか言わない。お姉様方の所に行け。
色々知って生き残れるならいくらでも聞くけど、生き残るためには目の前の敵を殺さなきゃいけない。
結局何も知らないまま、夕方出撃の号令がかかる。
敵から鹵獲した刀を腰に佩き、真っ赤に染まった布を顔に巻く。
少し伸びた髪を兜にしまい、槍を持って準備は完了。
当初の胸騒ぎ感や手の震え、敵の顔を見てしまった時の躊躇、そこらに散らばる断片の戸惑いはもう無い。
これが日常だから。
「出るぞ。」
クラウスの合図で、18番隊はダラダラと出撃する。
この2ヵ月で、隊の人員は大半が入れ替わっている。僕が古参の隊員という状況。
まぁ入れ替わるというか、死んだら補充の繰り返し。
何人死亡、何人補充。ここでは命は数字上のものでしかない。
そんなつまらない事をボンヤリと、久しぶりに考えていた。
「死にたくなければ殺せ!!!行くぞ!!!」
「おおおおお!!!!!」
気付いたら前線だった。
正面では15番隊が敵に囲まれている。残っているのは10人くらい。
いつものように、ジュリオは左、僕は右、クラウスは中央。
一斉に駆け出す。
距離がある状態で相手がこちらに気付く。
全滅させるために包囲を詰めていたのか左の方の反応が鈍い。ジュリオ達の左が速度を上げる。
クラウスが右に寄ってくる。
正面からほんの少し外側に移動しながら左がぶつかる。
ジュリオは相手が突き出した穂先を逸らして軌道をずらしながら接近し、そのまま腕を抉る。素早く槍を戻して喉を突く。
その横からジュリオを狙う槍。体捌きで僅かに穂先を躱す。流れで敵の手首を切り付ける。ブシュっと血が吹きあがりバランスを崩した敵を味方3人が一斉に突く。
包囲の左端に居た敵が1人、また1人と斃れていく。
クラウスは右端の敵が突き出す穂先を柄で払い、素早く戻して喉を突く。
すぐさま槍を引き戻し、その隣の敵の腹を刺す。
クラウスを狙って槍が突き出て来た。僕はそれ目掛けて思いっきり槍を叩きつけると、勢いよく敵の手から槍が弾け飛んだ。
そして槍を失った敵に接近して蹴り飛ばす。その勢いで体制を崩した後ろの敵の喉を突く。
敵の包囲が左右に割れると、完全に包囲されていた15番隊が息を吹き返す。
そのまま薄くなった中央を突破すると18番隊の後続がさらに中央に突入して敵を分断。今までの恨みとばかりに15番隊が勢いづき、攻撃に加わる。
敵は、15番隊を包囲した時点で舐め切っていた。嬲り殺しでの勝利を確信していた。
しかし、逆に包囲されて戦意が途切れてしまったようだ。
とはいえ簡単にはやられてくれないので、包囲の一部を若干開けてやると、我先に逃げ出した。
今日のは出来すぎてはいたけど、味方の救出に成功した。
18番隊は久しぶりの死者ゼロで今日の戦いを終えた。
紅緋色のロザリオ ろわる @rowaru
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