第8話 僕は、悔しい。

 僕のそこに貪りつき、舐め回す。後ろの奴が僕の耳を舐め回す。

 抵抗する事も、反撃する事も、何もできない。悔しい。悔しい。

 僕に出来る事は、目を瞑って、こんな事が早く終われと願う事だけなのか。それしかないのか。

 誰か、誰か、助けてくれ、気付いてくれ、ここを、僕を、だれか、誰か!


「お嬢ちゃん見ろよ。コレが今から入るからなぁ~。」


 後ろのヤツに強引に目を開けさせられる。

 自分以外のこんなモノを初めて見た。異常なほど巨大な男根がぴくぴくと跳ねている。


 それが、ゆっくりと近づいてくる。

 僕が、何で、こんな事に。

 抗う事も出来ずに、ただソレが僕の中に入ってくるのを待つしかないのか。

 悲しすぎて、悔しすぎて、辛すぎて、より一層震え出す身体が、ぎゅっと固く硬直する。動かない。動けない。


 向こうから、どさりと音が聞こえた気がした。


 次に、目の前の男の腹から、光るものが突き出て来た。涎を垂らした男の下品な笑い顔が醜く歪み、何かを言い掛けたが、すぐに腹から引き抜かれた剣が首に突き刺さる。

 それで身動きが取れなくなった男だったが、何とか背後から攻撃してきた存在を掴もうとして振り返ろうとした。直後、振り抜かれた剣に首を撥ねられる。心臓の鼓動に合わせてピュッピュッと吹き出す血が僕に降りかかってくる。


 そして僕の後ろに居る男に、剣が突き立てられる。うがっという声と共に羽交い絞めの力が急に弱まり、ビクビクと痙攣するような感覚が伝わってくる。


「よう、モテモテだな。」


 ふぅと一息吐いて、目の前に立っているのは、クラウス。

 一瞬の出来事で、イマイチ頭の切り替えが出来なかった。


「…ヤられたのか?」


「や……やられ……ない……」


 身体の震えが止まらない。うまく喋れない。


「下を履け。帰還だ。」


 帰還……何が……?


「一人で履けないのか?ガキか。世話を焼かせるな。」


 クソっ!


「身体が…うまく…うごかないんだよ…!」


「そんな恰好だとまた目を付けられて襲われるぞ。さっさと履け。」


 何でそんな事を言われないといけないのか。悔しい。

 そう思うと、少しずつ落ち着いてきて、震えも収まってきた。

 僕はズボンを履いて、顔の布を巻き、兜を被る。


「よし。帰るぞ。」


 クラウスの後を追って、岩場から離れた。

 僕にとっては敵の、味方の死体を置き去りにして。

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