第7話 僕はただ、ひたすら怖い。

「お嬢ちゃん、こんな所で一人かい?」


「おじちゃん達が連れて行ってあげるからね~。」


 そう言いながら小汚い血塗れのおっさん達が、左右から僕の両腕をガッチリ掴む。何だこの馬鹿力!


「離せっ!て!」


「うわマジで居たよ。ヤッベたまんねぇ。」


 もう一人、ちょっと若そうなヤツがニヤニヤしながら近づいてくる。

 何やってんだよ…こいつら…。


「お友達は殺し合いに行っちゃったからね~。」


「岩場に隠れていたら大丈夫だからね~。一緒にかくれんぼ、ちまちょうね~。」


 全力で、腕を、身体を、足を、バタつかせる。

 必死になって腕を振りほどこうとするけど、全然ビクともしない。


「離せ!」


 若い男が僕の腹を思いっきり殴りつけてきた。


「ぐうう!!」


 一瞬、息が出来なくなる。さっき食べたパンとか果物が上がってきた。


「さっさと動けや。」


 あまりの痛さと気持ち悪さで身体に力が入らなくなる。

 おっさん二人に腕を掴まれて、半ば引き摺られながら強引に歩かされ、岩場の奥に連れて行かれた。


「そっち見とけよ。」


「どうせ誰も来ねえよ。俺にもヤらせろよ?」


 若いヤツはそう言って岩場に入ってきた辺りで座って、ニヤけながら僕を見てる。

 おっさん一人が僕の両腕を羽交い絞めにして座る。腕を振り回そうとするけど、全然、身動きが、取れない。

 目の前でニヤニヤとしゃがむおっさんを蹴ろうとして、足を思いっきり前に突き出すけど、簡単に払い除けられる。


「いいじゃねぇか、どうせ死ぬんだからよ。」


 そう言いながら僕の顔を殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。


「ぅあっ……やめ……」


 何で、僕が、殴られて、いる、のか、わから、ない。


「あーーーー!クソが!クラウスが昨日来なければよぅ!」


 僕の顔を、腹を、殴る。


「へっへっへっ、さっさと脱がせっちまえ。」


「あぁ!?」


「ホント、弱らせてからヤるってのがオマエ好きだな~。だから娼館出禁になんだよ。へっへっへっ。」


「うるせー。」


 目の前のおっさんが僕の腰に手を掛ける。


「やめ…ろ……」


 何をされようとしてるのかは頭では分かっている。

 顔と腹の痛さでキツいのもあるけど、声が出ない。怖い。ただひたすら怖い。

 怖いなんてもんじゃない。恐怖だ。身体が震える。身体が動かない。身が竦む。


 おっさんは力任せに、一気に、僕のズボンを引き下げる。

 半笑いで、だけど目が笑ってなくて、だらしなく口を開けている。


「女ァ…久しぶりだ…」


「ホラ、兜も脱がしてやれよ。カワイイお顔を見せてくれよ。」


 後ろで僕を掴んでいるおっさんが促すと、僕は兜を強引に外されて布を引きはがされる。

 するとまた頬を殴られる。睨み返せない。怖い。ただ、ひたすら怖い。


「カワイイなぁ…」


 僕の両足首を掴む。嫌だ、やめろ、やめてくれ!

 力を入れて強引に開こうとするのに抵抗しようとする。けど。力で捻じ伏せられる。

 完全に身体の自由を奪われて、強引に開脚させられる。

 身体が大きく震える。震えが止まらない。身体が、動かない。動けない。


 怒り、不快、苦痛、憎しみ、恐怖が僕の中で渦巻いている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る