第6話 僕は必死で押し込んだ。

 ほんの200mほど先で行われている殺し合いの場所。


「行くぞ!!!」


 クラウスが走り出した。


「生きて帰ったらヤらせろよ。じゃーな。」


 ジュリオが軽口を叩いて走り出した。周りの人たちも走り出した。

 僕たちと違う色の鎧を着た人達を殺すために。


 僕は少し出遅れてしまった。付いて行かなきゃ。行かないと。嫌だ。一人は嫌だ。怖い。死にたくない。置いて行かれるのは―――――


「うおおおおおお!!!」


 叫びながら走り出した。叫ばなければ心がすり潰されてしまいそうだった。

 僕は目の前で行われている殺し合いの場に飛び込んで行った。

 別の色の鎧と、同じ色の鎧が入り混じっていた。


 どこだ?クラウス?ジュリオ?


 知っているこの二人を見つけたかった。見つけて、安心したかった。置いて行かれるのが怖かった。

 目の前の人が倒れた。その先には、別の色の鎧が居た。

 そいつは僕に槍を突き出して来た。でもその槍は僕には届かなかった。


『死にたくなければ殺せ』


 僕はもっと近づいて槍を思いっきり突き出した。

 槍はそいつに刺さった。

 槍が刺さった瞬間、ほんの少しだけそいつの動きが止まった。


「わああああああ!!!」


 僕は叫びながら、全力で、力任せに、槍を押し込んだ。必死で押し込んだ。

 僕の槍は、そいつの胸辺りに深々と刺さり込んだ。


「ああああああ!!!」


 そいつの全身がビクリとなって硬直しているように思えた。

 ごぼごぼと何かを言おうとして、血を吐く。そいつは体勢を崩してガクっと膝をついて、槍を手から落とした。

 僕は槍を引き抜いた。そいつは横向きにドっと倒れた。


 息が苦しい。気持ち悪い。


 倒れたヤツの後ろに居たヤツは、横を向いていた。

 僕はまた槍を突き出した。槍はそいつの腹に刺さった。

 そいつは慌ててコッチを振り向いたように見えた。

 目が合った。凄い形相で僕を睨みつけた瞬間に横から首を刺し貫かれた。


「ここは終わりだ!次行くぞ!」


 はっと気が付けば、僕の周りは同じ色の鎧の人たちしかいなかった。

 地面には別の色の鎧の人達が死にまくっていた。


 次?まだやるのか?こんな事…。


 でも置いて行かれるのが一番イヤだ。ついて行かなきゃ。

 怖かった。何なんだあいつら。なんでこんな所で殺し合いなんか―――――


「おい。」


 後ろから腕を掴まれる。誰だ?クラウス!?ジュリオ!?

 ちょっと安心して振り向いた。


「見~つけた。」


 昨日僕を連れて行こうとした奴らだった。

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