二章・泡影考証
N.O.A.H本部、ミーティングルームにて。
これからの研究方針を決めるために、ミーティングルームに主導5名が集められた。
「さて、現段階での情報を整理しようか。アミータ、頼む」
「はい。現在起きている特異事変の要項は、
・アカシック・レコードのデータ消失
・外的要因によるデータ操作の可能性
・モスデータの一時生成
・異常消失のログ
この四つでしょうね」
「ふむ……、全く持って分からないネ」
「とりあえず、稼働開始から先日、事変発生までのログを資料としてまとめてみました。やはり先日の『異常消失』という通知はこれまでに確認されていません」
「モスデータの一時生成も無し……か。外的要因については――――」
「無いだろうな。ビルド・ワンにハッキング出来る輩がいるとは思えない。これはアカシック・レコード自体の不具合とでも言うべきなのかねぇ」
今この場にいる全員がバーチャル画面に目を通している。技術が発展し、今はもうボータブルデバイスで画面を表示出来るようになっている。
宙に表示されるシステムログや観測データを見つめながらカイルがつぶやく。
「んー、これってもしかして、モスデータ生成の際に生まれたifまで消去されてんじゃないか?」
「ifまでぇ?となると、相当厄介だなこれぇ」
「そうですね……」
アルウィン所長のふわっふわした反応に若干気を抜かれつつも、同意する。「ifまで消去されているとなると、ifからの推論ができなくなりますね。時代におけるその"事象そのもの"の記録全てが消去される、ということになるでしょう」
無論、人の記憶からも消え去る、というわけではない。アカシック・レコードの存在が明らかになった今でも、一部の人々が伝承、逸話等を語り継いでいる。そしてそれはオカルト的人気を持ち、いわゆるアーバンレジェンドというものも、情報社会の水面下に息づいている。
それが正しいものであるかどうかは別として、ではあるが。
「ふぅむ……。カイルくん、アレはどうなったんだい?」
「MODですか?今解析してるところなんですけど、どうやら攻性プログラムっぽいんですよねぇ」
「攻性プログラム?対ウィルス用のMODなんですか?」
アミータが質問する。
攻性プログラムは一般的にウィルスの駆除に用いられるものだ。それがビルド・ワンにも存在するらしい。
「まぁそうなるなぁ。今回の件もウィルスなのかねぇ?どうだー、オースティン。システム技師からひとつ意見を賜りたいんだが」
「ウィルスか……。外部から侵襲させた、というのはありえないだろうな」
「ふむぅ?じゃあオースティンくんは今回の事変はウィルスによるものではないと思っているのかネ?」
「いえ、恐らく、ウィルスではあるのでしょう。ですが、今回のは外部から侵入したものではないのかと……。」
「最初から裡に潜んでいたということですか……」
「なるほどねぇ、まぁ確かにそれならある程度の説明はつくな」
「自動惑星記録システムと冠している以上、ウィルスによる被害も古代の人々は想定していたのではと私は推察します。MODに攻性プログラムというものが存在する以上、過去にも似たような事変が起きていたのではないでしょうか」
「過去か……」
「んぁ、思い出した!そういえばビルド・ワンについて調べてる時にアース・ゲイザーでの観測は出来るが出力がロックされてるデータがあったな!それじゃないか!?」
「なんですかそれ!?私、色々調べましたけどそんな情報どこにもありませんでしたよ!?」
「ははは、ごめんねぇアミータちゃん。記述しとくの忘れてたわ~」
所長はこういう適当なところがカイルに似ている。つくづく思う。
「対象領域はどこなんですか?」
「んー、古代ウルクのぉ、どこだっけ、確かボクのアーカイヴに保存してあったからちょっとまってねぇ」
アルウィンがコーヒーを啜りながらバーチャル画面を操作していく。
しばらく、あーだこーだと画面をいじり続けていたがようやく見つけたらしい。
「あったあったこれだ、転送するから目を通してみて」
場に居合わせた全員のバーチャル画面に転送されたデータが表示される。
「時代領域は……紀元前二六〇〇年代、これは地域領域はバビロン全域ですかね」
「本当だ、ロックされている……」
システムログには、ストーリー・テラーによる干渉が拒絶された旨の記録が記述されていた。ストーリー・テラーの干渉を拒絶するデータは今まで確認されていない。再現性が低く、はっきりと映し出せない接続不良はあったものの、「拒絶」は初めての通知だった。
「うーん、ビルド・ワンを作ったのは恐らくギルガメッシュ王とされていますからソレに関する情報なのでしょうか……?」
「ブラックボックスか」
この謎のブラックボックスが最有力候補だろう。解決策とは行かないまでも足がかりがつかめさえすれば、先に通ずるものはある。
「よし、最優先事項をブラックボックスの調査に決定。これで糸口をつかむぞ。」
「了解しました。各職員に概要資料を配布、調査させます。」
「君達も各自調査リーダーとして働いてもらいたい。何か分かったら随時報告するように。」
「了解しました。」
チーム総体の最優先事項がブラックボックスの調査変更された。
私はシステム研究及び、ブラックボックス周辺領域調査リーダーに。カイルがMOD解析と、観測波形検分リーダー。
アミータは伝承研究チームのリーダーとして任命された。
アルウィン所長、エルダー総統括官は共に主軸であるアカシック・レコードの調査チームとして指揮を執ることになった。
システム、ブラックボックス周辺領域研究チーム/オペレーションルームにて。
「リーダー。システム面での異常は特に見られませんでした」
「ふむ、システム深層にも何も痕跡は残っていない……か。やはりビルド・ワンから侵入したわけではなさそうだな。ありがとう。引き続き調査を続けてくれ」
ミーティングから三週間が経った。システム面にウィルスの侵入痕跡が残っていないか調査してみたものの、やはり手がかりは見つからなかった。一応調査自体は続けさせるが、恐らくは何も見つからないだろう。となれば。「各員、リソースをブラックボックス周辺領域調査に振ってくれ。特異事変の原因の手がかりが見つかるかもしれない。よろしく頼む」
ブラックボックスになっている対象領域の周辺に鍵があればいいのだが。
周辺領域の調査に入る。
データは領域区分ごとに泡のような形で画面に表示されており、それをひとつひとつ調査していく。モスデータの場合は泡が影になったり、酷く揺らいだりする。今のところはそういったデータは無いようだ。ストーリー・テラーにて描き出される映像はそれこそ前時代のVRなどとは比べ物にならないほどの没入感だろう。
周辺領域調査、ギルガメッシュ叙事詩を最初から追い始めて18日目。
連日連夜、泡を覗き続ける。
その作業の最中にある映像を発見した。この映像は……、ギルガメッシュ王が荒野に一人立ちすくみ、慟哭している姿だ。
伝承研究チームのギルガメッシュ叙事詩概要資料に目を落とす。
粘土板-九、大神会議が開かれ、神々により処分された泥人形、エンキドゥを埋葬した後の映像だろう。この後、死の恐怖に怯えるようになったギルガメッシュは永遠の命を求め、旅立つ。
叙事詩の通りならば「大洪水」の生存者、ウトナピシュティムの元へ向かうのだろう。
そして地の果てにて、マシュ山の双子山にたどり着き、山の扉の先、"暗闇"を抜けた先にある楽園を目指す訳だが――――――
「む、観測不能……?ここから先がブラックボックスか……?」
人を飲み込まんばかりの自然の胎動。
神代に消えた世界の在り方が映し出されている。
屹立した双子山にそびえ立つ巨大な扉。
側に立っている門番の二人のサソリ人間に許しを得て、ギルガメッシュが扉の先の"暗闇"に足を踏み入れた瞬間に、流れていた立体映像が途絶えた。暗闇で何も見えないのではない。ここにきて突然、アース・ゲイザーが対象座標を観測できなくなっていた。
ミーティング時点ではどこにブラックボックスが設置されているかのおおまかな地域領域、時代領域しか分かっていなかった為、明確な境域始点が分かったのは大きな収穫だろう。
あとは境域終点を探れば、ブラックボックス対象領域が絞りこめる。
恐らく、伝承にて多くを語られることのないこの"暗闇"で何かあったのだろう。
「だとすると終点は"暗闇"を抜けたあたりか……?」
時間量子を変更しながら、観測シグナルが発される時空地点を探る。
ギルガメッシュが"暗闇"に足を踏み入れてから7日間。
ようやく、観測シグナルが発された。予想通り、ギルガメッシュが"暗闇"を踏破して、楽園へたどり着いた様子が映像として映し出されている。
見るもの全てを魅了する宝石やブドウで満ちた木々が繁茂する楽園。
そこには困惑するシャマシュと話す、疲労した様子のギルガメッシュの姿があった。
伝承において、あの暗闇は一二〇kmの長さと言われている。それを徒歩で七日間かけて踏破した訳だが、あまりにも遅過ぎる。
ただ道をずっと歩くわけでもないのだろうが、彼はかつて、エンキドゥと共に一五〇〇kmもの旅路を三日間で踏破した男だ。道中何かあったとしてもあまりに時間をかけすぎている。観測の光が届かぬ"暗闇"にて、何かがあったのだろう。やはりあの"暗闇"がブラックボックスだ……!
すぐにオンラインクラウドに情報をアップロードする。この発見が大きな手がかりとなることは間違いない。
それから六週間後、カイルがオペレーションルームに訪ねてきた。
「またサボりか」
「違うっての!観測波形を調べてたんだが、神霊が顕現している時、波形に大きな"ゆらぎ"が出現することがわかったんだ。んで、ある程度のパターンを登録した波形検出プログラムを組んでみたんだ。ちょっち使ってみてくれないか?」
「分かった。やってみよう」
ブラックボックスを発見した観測データに波形検出プログラムを走らせる。
数分後、表示された結果には、
「これは――――――」
「"暗闇"踏破中に大きな"ゆらぎ"がある……!しかもこれ、類を見ない大きさだぞ!?」
あまりにも大きな異常が表示されていた。
「これまでに観測した中にはシュメールにおける事実上の最高神のエンリルもいた。確かに最高神なだけあって、他のに比べると波形もバカみたいにでかかったが、これは……比べ物にならないな……!?」
「粘土板にエンリル以上の存在は記述されていないが……、一体こいつは何なんだ?」
「アミータに連絡しよう。伝承研究チームにこいつを調べさせる」
「ああ……」
最高神を遥かに凌駕する存在であることを示す、異常な大きさの"ゆらぎ"。これを発する者がブラックボックスを仕掛けたのか……?
「しっかし、エンリルを上回る程の神様って誰だろうなー、むかーし近所のオカルト好きの兄ちゃんが色々神様についてのウンチクを語ってたんだが、俺興味ないから全然話聞いてなかったんだよなぁ。聞いときゃよかったかね?」
「聞いてたとしても今更覚えてないだろうに」
「ま、それもそうか。あーでも、ひとつ覚えてるぞ、確か聞いてたやつにエグい事するやついたんだよ。なんだっけ、ほら、あのー、敵対してた神様壊して大地にするやつ」
「創世神話のキングーじゃないか?」
「あー……そいつかぁー……。んー、んん?なーんか違う気がするような……。ま、いいか。その話聞いてさ、神様って結構怖いやつなんだな―って子供心に思ってたなぁ」
「まぁ、色々いるんだろ、神様にも」
「十人十色ならぬ、十神十色?」
「そういうことだな。ま、それはさておき、再来週のブリーフィングセッション用に資料ををまとめなくては……」
「真面目だナー」
「お前もやるんだよ」
「ですよね……」
主導五名によるミーティングから約半年、全職員を集めてのブリーフィングセッションが開かれた。
「今回の特異事変について、発見したものを各自説明してもらう。まずシステム技師、オースティンくん、頼めるかネ?」
「承知しました。私たちはブラックボックス周辺領域の調査と、システム面での調査を行いました。まず前者から。概要資料を表示します。周辺領域を調査した結果、ブラックボックス領域の特定に成功しました。境域はギルガメッシュ叙事詩、粘土板-九に記述されている双子山の扉の先、"暗闇"と呼ばれている領域です。また、ギルガメッシュが対象領域内を踏破している最中ですが、観測波形に大きな"ゆらぎ"が生じていました。先々週、カイル特別技師が他の観測データと照らし合わせた結果、その"ゆらぎ"は、"何らかの神霊が顕現している時に発生するもの"と言うことがわかりました。恐らく、あの領域の裡には何者か……、恐らく、神霊が潜んでいるのかと推察されます。ロックを仕掛けたのも同一存在によるものと思われます」
「ビルド・ワンが意図的に伏せているのか、はたまた神霊によって伏せられているのか、かね。まぁ概念情報惑星のデータにロックをかけるなんてことが出来る以上、後者の可能性が高いだろうな」
カイルの言うことが概ね正しいだろう。ロックをかけたのは神霊である可能性が高い。何せ神様だ。そのくらいのことは普通に出来るのかもしれない。
「伝承研究チーム、粘土板に記述されている神様でそれっぽいのはいるかネ?」
「私から説明させていただきます。」
アミータが立ち上がる。
「ギルガメッシュ叙事詩に登場する人物に関してですが、一応、一覧表をまとめてみたのでご確認を願います」
各自のバーチャル画面にデータが転送された。
///ギルガメッシュ叙事詩主要人物概要一覧///
ギルガメッシュ/主人公。三分の二が神、三分の一が人間である、ウルク第一王朝第五代の王。
エンキドゥ/アルルにより粘土から作られた野人。
ルガルバンダ/ギルガメッシュの父。ウルク第一王朝第三代の王。ウルクの都市神。
リマト・ニンスン/ギルガメッシュの母。ルガルバンダの配偶神。智慧と夢解きの女神。
シャマシュ/イシュタルの兄。正義を司る太陽神。シッパル市とラルサ市の都市神。
エア/知恵を司る深淵の水神。人間を創った全知全能の男神。エリドゥの都市神。
イシュタル/光を司る近世を象徴とする愛と美の女神。大地母神の血を引く戦や豊穣の女神。
アヌ/イシュタルの父。天空を司る最高神。「白神殿」の主神。
エンリル/神々の王で空を司る風と嵐の男神、大気神。シュメールにおける事実上の最高神。
ウトナピシュティム/「大洪水伝説」の主人公。大洪水から逃げ延びた為神々から不死の体を与えられる。
フンババ/レバノン杉の森に住む巨人。七層の光輝で身を武装した全悪。自然神とも言われる。
グガランナ/イシュタルがアヌを脅して作らせた天の雄牛と呼ばれる怪獣。
シャムハト/ギルガメッシュによりエンキドゥの元へ派遣された神聖娼婦。
シドゥリ/ギルガメッシュが出会った料理屋の女将。イシュタルの化身とも言われている。
ウルシャナビ/ウトナピシュティムに使える船頭。
アルル/創造神。エンリルの妹、または配偶神。エンキドゥを創った女神。
アルラトゥ/イシュタルの姉。闇を司る死の女神。夫、配偶神としてネルガルを持つ。
ウルクの長老たち/ギルガメッシュに異を唱え、諌める立場の者。保守的思考。
「ふむ、この中だとデータ操作ができそうなのは能力的に言えば――――」
「リマト・ニンスン、エア、アルルの三柱かね。字面だけみればの話だが」
「そう思ってアース・ゲイザーで確認してみたのですが、この三柱が顕現している時の"ゆらぎ"は"暗闇"にて観測されたものよりもずっと小さなものでした。やはり、粘土板に記述されていない神霊がいるのだと思います。アース・ゲイザーの技術の出処だったりするんじゃないでしょうか、この神霊」
アース・ゲイザーが今このシステムについて、観測できるのは、これらを造ったのがギルガメッシュ王であることだけだった。どういった経緯でこのシステム開発に着手したのか、技術の出処に関しては全く観測できていないのが現状だった。
「古代ウルクを調べてみてもこのアース・ゲイザー等に関しての情報は驚くほどに少ないんだ。閲覧領域にも神霊によるロックがかかっているのかもしれない、というのが現段階での見解かな」
「私見ですが、いくらギルガメッシュ王が"全てを見たもの"と言われているとはいえ、概念情報惑星なんてものを見つけられるとは思えません。おそらくは神話的セオリーで言うのなら神授の智慧とでも言うべきものなのではと思います」
「じゃあ、智慧自体はギルガメッシュにより生み出したものではないが、ここにない、何らかの神霊をギルガメッシュが見つけ出し、アカシック・レコードに関する情報を聞き出したとか……」
「おそらくはそういった類のものだとは思うのですが……」
神代に生ける神霊。それは情報でこそ確認できる存在であり、今こうしてテクノロジーが発達している現代においてはオカルトとされるもの。
その力が時を経て、現代においてもなお顕れているのなら。外的要因によりなされたものであるのなら、そこには理由があるのだろう。
一体何故、その情報にロックを仕掛ける必要があるのか。
人間を守るためか。
神を守るためか。
それとも。
それら全てに害をなす巨悪であるからなのかは、未だに分かっていない。
「続いて、後者、システム面での調査なのですが、ビルド・ワンがバックグラウンドにて何らかの処理を行っている、というのが現段階でわかっていることです。それ以上のことはまだ何も。また、ビルド・ワンからアカシック・レコードにウィルスが侵入したと想定して、各種システム階層を調査してみましたが、侵入された痕跡等は見つかりませんでした。やはり、神霊の力、というのが最有力でしょう」
「……なるほど。わかった。引き続き、調査を行ってくれ。伝承研究チームは粘土板に記述されていない神霊の存在を主軸として調査を進めてほしい。何か手がかりを得られた場合随時報告するように」
「了解しました」
「では次、カイルくん。頼めるかネ?」
「はいはい。波形検出に関してはオースティンの説明で分かったでしょうから、俺からはMODについて説明させていただきますよっと。去年の9月に見つけたものですが、いわゆる攻性プログラムでした。アカシック・レコードのウィルス的存在を倒すためのものですね。つまり、そういったものにより侵襲されることはある程度予想されていたわけです。んで、推論ではありますが、今回の特異事変に関しても、この侵入者が予想されていたものなのかと。ただ、この侵入者が件の神霊と同一存在であるかどうかは分からないってのが正直なところですね。俺からの説明は以上です」
「そうか。ありがとう。では今度はエルダーくん、頼むネ」
「御意。私と、アルウィン所長はともにアカシック・レコードの調査をした。主に、外的干渉がなかったかどうかだ。結果から言えば、干渉の痕跡が発見された。一時期、アカシック・レコードの防御波形が弱まった節がある。ほんの僅かだがそこにデータの残滓が残っていた。おそらくは先程オースティン技師が述べていた神霊によるものだろう。ただ、もうひとつ別の痕跡があったのだが、ソレに関しては全く見当がつかないというのが現状だ」
情報が各チームから出揃った。ある程度の情報が出てきたとは言え、まだ解決には程遠い。
「現段階での情報をまとめて概要資料を手配させる。引き続き、調査を頼む。これにて今回のブリーフィングセッションは終了とする。以上だ」
「さて……、届くかねぇ、神様に」
カイルがぽつりと呟く。
事態は人だけの問題ではなく、神霊さえもが関わってくるものになった。
そう簡単に解決するような問題ではないと思ってはいたが、まさか神様とは……。
(まだまだ、先は長くなりそうだな……)
この時はまだ、その報せには誰にも気づいていなかった。
人知れずに送り込まれるメッセージ。
ソレはまた、一つの情報として字間の波濤に消えていく。
ひとつ。また、ひとつ。
Oct 10 16:16:25 artemis sshd[428]: connection from "***.***.*.**:****"
Oct 10 16:16:27 artemis sshd[763]: Remote host disconnected: Authentication method disabled. (user '****', client address '***.***.*.**:****', requested service 'ssh-connection')
Oct 10 16:16:27 artemis sshd[763]: User authentication failed: 'Authentication method disabled. (user '****', client address '***.***.*.**:****', requested service 'ssh-connection')'
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