16 配下の強化
「なあ、そろそろ出ようぜ」
悠木が言ってくるがまだやる事がある。
まずは男に水をかけ目を覚まさせる。
「おい、お前らどこから来たんだ」
「さ、最初は警察署にいたんだが、ゾンビ共がバリケードを破って襲って来て崩壊してしまったんだ」
だから銃を持っていたのか。
「もしかして赤い目をしたゾンビがいなかったか」
「ああ、ほとんどが赤い目をしていたぜ」
そうなるとここも早く出ないと危ないか。
「それじゃ何故ここを襲った?」
「ゾンビから逃げ出して、ここの駐車場に逃げ込んで一息吐いてたら女が歩き回っていたからな。生きた女なんて今は貴重だから、いたら襲うしかないだろ?」
「そうか。死ね」
銃で頭を撃つ。
こんな奴は生きる価値もない。
女性陣は何か言いたげだが、クズにかける情けはないのだろう、黙っていてくれた。
次にしたのはトラックの物色だ。
都合良く2トンの冷蔵車を見つける事ができたので使わせてもらう事にする。
荷台には奥に冷凍する場所もあり、納品する前だったのか肉や魚などが入っていた。
ただ調理器具がないので、宝の持ち腐れだから後でキャンピングカーを探さないとな。
運転は俺がする事にし、アルファードは早見さんに任せる。
トラクターは置いて行こうと思ったが、なんと内田さんが運転できるそうなので任せる事にした。
ゴスロリとトラクターとはシュールだな。
トラックには俺と、どうしても乗りたいとの事で佐倉さんを乗せる。
アルファードには早見さん、沢城さん、悠木の三人。
トラクターは内田さんと、安全のため大橋を乗せる事にした。
配下なのにさん付けはおかしいでしょ?
出発の前に一つ実験をしたいと女性陣に断りを入れ、大橋を連れて地下一階の食品売場に向かう。
またバカが来ないとも限らないので、早見さんと沢城さんに銃を渡しておく。
大橋と地下一階に入ると、そこはゾンビの巣窟と化していた。
まあ俺らには何人いても関係ないがな。
近くにいたゾンビを停止させ実験を始める。
それは大橋にゾンビを食わせる事だ。
意識のあるのに食わせるのは抵抗があったが、本人は思考がもうゾンビになっているようで、問題ないとの事なので実験に踏み切った。
最終的な目標は、赤目ゾンビの生態を知る事と大橋の強化だ。
見る限り赤目ゾンビは普通のゾンビより知識があり、言語も少し進化してたので、大橋もそのうち話せるようになるのではないかという希望もある。
そう考えてる内に食事が終わったようだ。
「何体食った?調子はどうだ?」
(五体。まだ食べたいです)
目を見てもまだ白く濁ったままだ。
更に五体ほど停止し食べさせると、ようやく変化が現れ始めた。
目が赤くなり浮き出た血管も治まり、人間の頃の容姿に近付いた。
関節が前よりスムーズに動くようになり、少しは走れるようにもなったので、これで戦力としても申し分ない。
とりあえず今回の実験は終了し、皆の所へ戻る事にする。
「顔が綺麗になってるッス」
「うん。赤目、格好いい」
佐倉さんと内田さんが大橋に近付いて、その変わりようを観察している。
他の皆も驚いているようだ。
「どうやったんだ?」
「企業秘密だよ」
「ケチだな」
「もう少し皆がこの世界に慣れたら教えるよ」
「ろくでもない理由そうだな」
まあ悠木なら気付いてそうだけど。
ここでやる事も終わったので、そろそろ次に向けて出発することにしよう。
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