15 オウジサマ?

佐倉さんと友達ゾンビの手を引き、慌ててエレベーターに乗り込む。

無線の奥で銃声が聞こえたので生存者がいたのだろう。

最悪のケースだ。

嫌な予感がするため、佐倉から盾を受け取りエレベーターの扉の前で構える。

その間に友達ゾンビと意思疎通をする。


(人を襲うのに忌避感はあるか?)

(いえ。食料としか感じないみたいです)

(ゾンビは?)

(同じく食料です)

(それなら一緒に戦ってもらって良いか?)

(イエス マイ オウ、マジェスティ)


地下二階に着き、エレベーターの扉が開いた瞬間、案の定銃声が響く。

ただの拳銃だったので盾で防ぐ事ができた。


「行け!」

(イエス マイ オウジサマ!)


友達ゾンビへ命令し、二人いた内の一人へ襲いかからせる。

もう隠す気はないのか言葉が変わってるが、気にせずにもう一人の頭へ銃を突き付け引き金を引く。

人を殺すのは初めてだったが、死にたくはないので仕方ない。


「人を撃って良いのは、撃たれる覚悟がある奴だけだ」

「何してるんッスか!早く行くッスよ!」


格好付けてたら佐倉さんに急かされた。

もうちょっと余韻を味わいたかった。

友達ゾンビはすでに倒したようで、男が首筋から血を流し倒れていた。

こちらは片付いたので車の方を見ると、悠木が三人いる男をボウガンで牽制していた。

一人を友達ゾンビに任せ、俺は二人いる方へ盾を前にして突っ込む。

突然現れた俺達に三人は慌てふためき対処できないようだ。

俺はまず一人を盾で殴り意識を奪う。

もう一人は銃口を向けてきたので、容赦なく頭を銃で撃ち抜く。

友達ゾンビの方も片付いたので、悠木からダンボールの中からロープを出してもらい縛りあげる。

あいつのダンボールは某ポケットか。


「福山さん危ないッス!」


佐倉さんが叫ぶと同時に銃声が聞こえた。

どうやら先ほど友達ゾンビにやられた奴がゾンビ化したようだ。

頭を見事に撃ち抜かれ倒れている。

佐倉さんの方を見ると銃を構えたままの格好で固まっていた。

ゾンビとはいえ人を撃った事に罪悪感を感じているのだろう。


「あ、あたし、あたし、人を」

「助かった。佐倉さんが撃たなければ俺は死んでいた。本当にありがとう」


俺は混乱している佐倉さんに話かけ落ち着かせる。

少し経ったあと佐倉さんも落ち着いたのかその場に座り込む。

そしてその場に残されたのは、縛られた男と友達ゾンビ。

男は放置で先に友達ゾンビの説明をするか。


「あー、こちら新しく俺の配下になった友達ゾンビだ」

「友達ゾンビ?それはオーチャン」

「オーチャンって佐倉さんと内田さんの友達よね?」

「まさか福山さん、ゾンビにも手を出したんですか!」

「救えねー」


ちょっと待って早見さん。

人にも手を出してないよ?


「福山さんがオーチャンを助けてくれたッス!」


佐倉さんマジ天使。

頭を撫でてあげると頬を染めて照れていた。

早見さんが睨んでくるが、手を出したってこれじゃないよね?


「とにかく王の力で隷属したので危険はないよ」

「それなら良いのですが。オーチャン、大橋さんでしたか?」

「そう。大橋 彩。私の同級生」


と言って友達ゾンビ改めて大橋さんに抱きつく内田さん。


「これはゾンビから治せるのかしら?」

「まだわからん。この力はまだ不明瞭な事が多くて」


沢城さんは医学的に興味があるようだ。

この力の解明もいつかしないとな。

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