第2話 エピローグ②
「住所はここであってるけど…」
悠真は戸惑っていた。それもそのはず、想像してた建物より小さい。というよりこれ普通の『家』なのだから。
「これどう見てもただの家だよな…」
少し早めに着いた悠真はスマホをいじりながらそう呟いた。その建物は確かにビルでも高級マンションでも病院などの施設でもない、ごくごく普通の家二階建ての家なのだ。
暫く待っているとその家から1人の男性が現れた。
「お待ちしておりました。千堂様でございますね。どうぞ、中へお入りください。」
そこに現れたのは30代ぐらいのスーツを着た男性だった。
「あ、はい。失礼します」
まさかこんな家からスーツの男性が出てくるとは思わなかったので少し緊張気味に答えてしまった。「あ、」ってなんだよ。
男性に暫く着いて行くと驚くことにエレベーターがあったのだ。二階に行くのにエレベーター取り付けるとかここの家主はどんな人なんだろう。
しかし、エレベーターに入った瞬間にその疑問はすぐに解決した。なんせそのエレベーターには地下のボタンがあった。
地下3階に到着したら男性は降りずにそのまま下に降りていった。どうやら前の部屋に待っている人がいるらしい。
ドアをノックし返答を確認して開けると、そこには肩まで伸ばした金色の髪に、青みがかった銀色の目が特徴的な1人の少女(高校生くらいだろうか)が椅子に腰をかけていた。
「はじめまして、私は
彼女はそういうと何故か悠真を見つめていた。
「どうかしましたか?」
「えっ?、あ!何でもありません、ぼーっとしていました」
無意識だったのか彼女は慌てた様子で話しを切り出した。
「今日は具体的な仕事内容をお聞きしたいということでよろしいですね?」
「えぇ、求人募集では詳しく書いていなかったのでとりあえず聞いてみようと思いまして。それに世界を救うってどういう意味ですか?」
求人では詳しい事は何も書いていなかったので疑問に思った事をそのまま聞いてみることにした。
「では順を追って説明しますが、これから話す内容は他言無用でお願いしますね」
「わかりました、お願いします」
他言無用という事はやっぱり怪しい仕事なのだろうか。
「そうですね…悠真さんは異世界は存在すると思いますか?」
「…異世界ですか?」
聞き間違いだろうか、悠真は質問の意図が分からず困惑していた。
「はい、異世界です。妖精がいたり、エルフなんかも良く小説とかで題材になりますよね」
聞き間違いではないらしい。何の意図があるか分からないが何かしら意味があるのだろう。しばし考えた悠真は
「さすがに存在しないと思いますよ。漫画じゃないんですから…」
男なら一度は異世界に憧れるだろう。悠真も例外なく憧れていた。しかし社会人になれば異世界も異能力も存在しない事ぐらいは理解する。
「分かりました。では最後の質問です。もし異世界があると仮定してそこでバイトができるならしたいですか?」
異世界があると仮定してか…しかもそこでバイト。正直なところ興味はかなりある。
「そうですね、興味はありますね。貴重な体験になりますし、まぁ異世界があればの話ですが」
そう。異世界なんてあるはずがない。あれは人が生み出した願望みたいなものだ。願望が故に異世界に関する漫画や小説は都合よくできている。
「興味はおありなんですね?では単刀直入に言います。貴方には異世界に行っていただきその世界を救って欲しいのです。」
「…はい?異世界を救う?あれですか、異世界ってなにかの隠語とかそういった感じですか?」
異世界なんてそんなファンタジーな話が現実世界に存在するはずがない。それともこれは宗教かなにかの勧誘なのだろうか、そうだとしたら尚のことタチが悪い。
「いえ、隠語でもなければ冗談でもありませんよ。異世界は存在します。現に私はこちらの世界の人間ではありませんから。そうですね、異世界人ってやつです」
悠真は呆然を通りこして呆れていた。なにせ目の前にいる少女は異世界から来たと言っているのだ。
「いやいや、冗談はやめてください。異世界があります。異世界人ですって言われてそんなの信じられるわけないじゃないですか、せめて証拠でもあるんですか?」
悠真がそう言うと、待ってましたとばかりにその少女は立ち上がる。
「ではお見せしましょう。あっ、その代わりもし私がその証拠をお見せしたら、貴方はこの話を引き受けてくれるという事でよろしいですね?」
自信ありげに交換条件を持ち出した。
「…分かりました。違かった場合は即帰らせていただきます」
ええ、とそう言い少女はクスリと笑う。
「それではお見せしましょう」
そう言うと少女は、よく聞き取れなかったが、何かを言った瞬間、目の前から姿を消したのだった。
「は?」
悠真は辺りを見渡したが少女の姿はどこにも見当たらない。
「こちらですよ」
ふと頭上から声がし上を向くとまるで天井からぶら下がるようにして、そこにいたのだった。
「どうですか?これで信じてもらえましたか?」
目の前で信じられないことが起こりその状況を飲み込めずにいた。しかしこれは疑いようがない。目の前で起こっているのだから。
「まじかよ、それって魔法とかそんな感じのやつ?」
敬語で話すことすら忘れているほどに混乱していた。
「はい、そうですよ。私の場合空間制御と回復魔法が使用できますね…それでこれを見て貴方の言う『証拠』にはなりましたか?」
そう言い少女はまた消え、元のソファまで移動していた。
「あぁ、信じられないが本当の話みたいだな」
「では…」
そう言うと少女は立ち上がり手を差し出した。
「これからよろしくね、悠真さん」
いつのまにか少女もフランクな話し方になっていた。しばし迷っていたが、
「…約束だもんな、よろしく、えぇと…」
なんと呼べばいいか迷っていると、それを察したのか
「寧々でいいですよ」
「あぁよろしく、寧々」
こうして悠真の就職活動が終わりを告げた。
(そういえば、仕事内容詳しく話してなくないか?)
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