LLP【From:鯉子】

こんばんは!鯉子です。




今日は!待ちに待った!念願の!aikoちゃんのライブへ!行ってきました~!inさいたまスーパーアリーナ!


いやー、もうほんとにすごかったです!素晴らしかった!大感激!冷めやらぬ興奮!ああ、一生大好きです!


今日はたいへん浮かれておりますが、堪忍してくださいませ。



さて。

ろくに眠れぬ昨夜を越えて、やや体調面が心配ななか、さいたま新都心に降りると、そこにはちいさく手を振る男の姿がありました。

彼こそは年来のaiko仲間、私とおなじくいわゆるaikoジャンキーといわれる生き物であり、高校生のころからの付き合いがあるナカノでありました。


彼はなぜか青白い顔をしています。聞くと、緊張で吐き気がするのだそう。なんせ彼は初のライブ参戦。無理はありません。

なんせ三度目の私ですら不眠におちいるくらいです。正気をたもって無事にこれただけでも褒められるべきことでしょう。


はやめに到着した彼はあらかじめグッズを私のぶんまで買ってくれていました。さっそくトイレに入って衣装を着替えてみると、私の伝えたサイズよりひとまわりちいさくしたというシャツはあつらえたみたいにぴったりでした。


さすがはナカノです。


私たちは同性同士の親友のように仲が良く、20歳くらいの頃は年に2回平均で一緒に旅行へ行っていたくらいに気ごころの知れた古くからの仲なのです。

だいたいのことは知り合っているつもりです。あくまで友人として、ですが。彼の存在によって、私は男女の友情成立説を疑わずに支持することができます。


というわけで久しぶりの再会に積もる話もあり。

まずは再会と、迎えたこの素晴らしい日を祝して、居酒屋で乾杯をしました。

軽く一杯、のはずがしっかり酔っぱらうまで呑んでしまい、ふらつく足取りで会場入りし、開場から開演までのあいだを火照った瞳をギラギラさせながら椅子に沈みこんで過ごすことになりました。


これはまずいかもしれぬ、と内心ひやひやしていた矢先。


ライトが落ち、悲鳴に似た歓声があがり、幕が下りました。


うなだれていた私たちはスイッチが入ったみたいに立ち上がり、気が触れたのではないかと思えるほど元気いっぱい泣き叫びました。


ネタバレの関係上、なにがどうとは詳しく書きませんが、ほんっとうに最高のセットリストで、一曲目から震えが止まらず。


ある曲では朝9時の自転車を漕ぐ高校生のころの風景と重なり、またある曲では好きな人ととなり合わせでいながら告白できずに終わった夏の日の茅ヶ崎海岸の夕暮れが重なる。ほかにも、授業をすっぽかしても心配事ひとつなく過ごした退屈で愛おしい大学時代の友達とのぐうたらな1日、所属していたラブコメ部という奇妙な部活動のなかである日の放課後偶然見てしまった部長が静かに流す大粒の涙。

そのすべての風景にaikoの曲が流れています。私の青春そのもの。そう言っても過言じゃありません。


走って、歌って、笑かしてくれるaikoちゃん。

寝不足もアルコールもなんのその、私は身体を燃やして、しっかり汗をかきながら彼女の一挙手一投足を夢見るように眺めていました。

どうしたら私の好きだという気持ちを伝えることができるだろうか、どうして伝えられないのだろうかと、ときには落ちこみそうになるほど楽しすぎてまぶしすぎて苦しい幸せな時間でした。


あとお笑い芸人の山ちゃんが来てたり。このことをラメちゃんに話すと、とても羨ましがっていました。山ちゃんもサービス精神満載で、たいへん素敵な方でした。


ともあれライブ後の熱の名残りとじわじわ蝕む空虚。


日高屋で餃子つまみにビールを飲みながら、明日からなにを楽しみに生きていこうかと放心しているナカノに、私のいまの生活のことを話して、ラメちゃんや、くらげちゃんの人となりを紹介すると、会ってみたいなと言うので、ちょうどかかってきたラメちゃんからの電話を取り、彼にパスしてみました。


するとどうも話が盛り上がったのか、こんど一緒に遊ぼう、という一応の口約束を取りつけたらしく、それを聞いた私は昔からの友人と、それから現在の友人の両方と一緒にいられる時間を想ってすぐに息を吹き返しました。ナカノも新しい出会いにたちまち元気を取り戻したみたいでした。聞くところによるとナカノはどうも暗い日常を送っているみたいなので、これがいい方向に転んでくれたら嬉しい。


私たちはそれからファミレスをはしごして、むかし話やいまの話、未来の話にまで橋をかけてたくさん話をしました。地元、共通の友達などの話は尽きることもなく。


ナカノは私に恋人がいることを知ると、おどろいて、むかしはあんなに男嫌いだったのになあと言いました。

私は笑ってしまいました。そんな風に喧伝していた時期がたしかにあったのです。

どうなのでしょう。ずいぶんと設定にこだわっていた時期というものは、だれにでもあるものでしょうか?

正直なところ、思春期以来、私は男性に興味がなかった時期など一度たりともありません。

そのことを話すと、彼はけらけらと笑って、「俺もじつはお前の友達の〇〇ちゃん、あのころ好きだったんだよな。さらに言うと、告白して、フラれた。」と恥ずかしそうに言いました。

昔話をできる友人がいるというのは、ほんとうにいいものですよね。



ナカノとは終電で別れ、私はハーゲンダッツのパックを帰りがけに買って帰宅しました。


こんな日があるから、たまらない日々もがんばれる。

ただいまー、と扉を開けると、リビングで将棋をさしていたラメちゃんとくらげちゃんが私の手のなかのご馳走を見とめ、ヒナみたいに寄ってきました。


私はいつか、aikoちゃんにありがとうを面と向かって伝えられたらいいのにと思います。そのためにも小説をいっちょ本気で書いてみようか。不純でもなんでも、私もなにか表現の形でだれかの役に立てる仕事ができたらいいな。


そんな目の覚める空想で眠れない夜にブログを書きましたが、いよいよ眠くなってきました。ここらで今日は失礼します。



一生aikoジャンキーやで。



それでは、また。

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