雨【From:くらげ】

三日続きの雨。気温は下がる一方。ついにコートを引っ張り出す。

女の子はひとつくらい良い傘を持っておくべきだよと言ってFさんが買ってくれた傘を手にする。午前。雨の弱くなった隙を狙って街へ出た。どうしても必要な画材があった。

ライムグリーンの雨傘は開くと空の光が柔く透けてさらに明るさが際立った。ショーウィンドウに反射する自分の姿はとても目立つ。ちょっとだけ恥ずかしい気もする。でも彼は素敵だと言った。私は口の中で素敵だよ、素敵だよ、と口ずさみながら歩いた。

買ったもの。大小さまざまのカンバスを8枚、ルフランのブルーをいくつかと、それから鉛筆を数本。領収書をなくしてしまいがちだから気をつけなければいけない。

帰りがけにTSUTAYAに寄った。「フランシス・ハ」を借りた。私はグレタ・ガーウィグの大ファン。この映画ももちろん大好き。雨の日は映画を観たくなる。家の近くのコンビニでナッツチョコとポップコーンを買った。

帰宅すると、私の手にTSUTAYAの袋を発見した鯉子さんがすばやく反応した。一緒に観ることにした。

カーテンを閉める。かすかな雨の音。暗闇に発光する画面をじっと観て短い一日のうちのほんの短い数時間を過ごした。鯉子さんはガーウィグをとても気に入っていた。映画についての話をした。調べてみると、都内のミニシアターで彼女の新作がかかっていた。一緒に行こうと鯉子さんは言った。どちらかと言うと部屋でゆっくり観たい主義なので二の足を踏んだのだけれど、鯉子さんは折れなかった。おごってあげるからというので行くことにした。明後日観に行く約束。

鯉子さんは帰宅したラメさんも誘った。けれども仕事だと言った。あたしも彼女の映画は好き、と言った。もう新作は観に行っているみたいだった。悪戯っぽく笑って、ネタバレしようとしてきた。あわてて鯉子さんが口をふさいだ。

思えば、鯉子さんとふたりで出かけるのは初めてのことだ。

楽しみ。

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