可愛い鮫と青い星【From:ヒラメキン】

 商店街の例の精肉屋さんへ。ゲンキンなあたくし!


 おばちゃんはハマ子さんと言うらしい。ハマちゃんハマちゃんハマちゃん。

 店先でちょっと話して、それから店の奥に招かれたあたしは図々しくもお茶やお菓子やらを頂戴した。ハマちゃんはあたしのことを前から知っていたという。公園でぼけーっとしてるところを見かけたのだとか。

 なんたる不覚!

 あたしはずずずとお茶をすすってお茶をにごした。

 でもまあたしかによく天気のいい昼時を狙っては、おやつと文庫本とブルーシートを手にひなたぼっこに出かける。

 公園というのは芝生と、空と、カラフルな遊具があって、野生動物と、野生じゃない動物と、子どもたちが走りまわって、大人たちは郷愁や愛情の記憶に巻かれて優しさを取り返すことができる場所で、あたしはだから好きなんだ。

 空や芝生と平行になるのって、すっごく自然なことだもんね。そういう隙間に詩が生まれると思うんだ。あたしは詩が好き。それはなにもバイロンやフロストや井上陽水の詩じゃなくてさ。自分の詩がね。そういう偉大なのも好きだけど、でも詩人じゃなくたって、だれでもふとした瞬間に詩を生んだりするものでしょ?


 学校から帰ったハマちゃんのお孫さん、私よりずっと年下の、高校生の女の子ともすこしばかりお話をした。小鮫ちゃんと言う名前。鮫ちゃん。ステキな名前のとびきりキュートな女の子。彗星みたいな。

 鮫ちゃんはハキハキとしていて、まさしく体育会系といった感じだった。高跳びの選手らしく、お腹を触らせてもらったけど、お中元のきつく縛ったハムみたいだった!そう言ったらふたりは笑ってくれた。

 鮫ちゃんが電話番号を交換しようと言ってくれたから、あたしはうきうきで電話番号を教えた。休日に連絡してくれるという。


 友達がいないあたしに訪れたふいのよろこび!

 でも焦ってはダメだぞ。あんまりがっつくと、こいつはめんどくさいやつだと見限られてしまう。お姉さんみたいに、そう、実のお姉ちゃんみたいに!

 という感じであたしは一日中ずっと浮かれていた。

 

 そうそう、それから配達を昼もやることにしたんだ!

 この仕事、どうやらあたしと相性が良さそうだぞ。めずらしく長続きしそうな気がするぜ~!

 がんばるんば~。


 HiRame

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