竜胆【From:くらげ】
通り過ぎざまに横目で花屋を覗くと、ガラス戸のむこうにとても素敵な紫の花。私はきびすを返して遠慮がちに店のなかへ入った。奥から店の人。色の黒い筋骨たくましい男の人が出てきて石うすみたいな低いつぶやきでその花の名を教えてくれた。リンドウ。私は気に入って一輪だけ買うことにした。
茎の短さを整えるときになってようやく私はハッとして花瓶を買わなければならないことに気付いた。100円ショップを眺めたが目ぼしいものはなし。ぐるっと期待のかかる店を回ってみようかと思ったけれど、そうこうしているうちに花が枯れてしまいそうだったから、早々に帰路についた。
部屋を見回す。リビングをうろうろする。結局、帰宅したヒラメキンさんから空いたウィスキーの瓶をもらってひとまずはそこへ花を挿すことにした。ありあわせの間に合わせにしてはなかなか悪くない。ジャックダニエルとリンドウ。花はいいものだ。もの言わぬ花弁の美しい佇まい。絵だ。私が描くようなグロテスクとは異なる絵。午後中ずっと眺めていた。
明日はFさんに会う。
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