閻魔の草履番【From:ヒラメキン】

 新聞配達の感想……




 し~ん~ど~い~!




 すぐに慣れるよと教えてくれるおじさんは言うのだけれど、道を憶えたり、原チャリぶっ飛ばしたり、階段を上ったり、下ったりと初日からてんてこまい。

 なんとなく勝手はわかってきたかなと思えば、昨夜は雨に降られ。新聞は濡れるわ、タイヤは滑るわ、寒いわでとってもつらかったね。


 しかしあたしは負けませんよ!


 太ももがさっそく筋肉痛になってちょびっとへこたれそうになったけれど、でもたぶんこういう体力的な部分はたしかに慣れるものだろうし。なにより深夜の静まり返った街の空気はとても気持ちがいいんだ。


 いまは教官役のおじさんの後をついて回ったり、後をつけ回されたりするけれど、ひとりだちできれば悠悠自適にやれるだろうし、なかなか楽しみであります。

 昔っからどうしても共同作業とかそういうのが苦手なんだよね。

 子どものころなんかは「落ち着きがない。協調性がない」ってそればっかり言われてさ。

 あたしはそのたび「コメントに独創性がない」って赤を入れてやるんだ。

 するととっても怒られるわけ。人は図星をつかれるとうんたらかんたらってやつだよね、それって。ありきたりな言い回しとか、ことわざとか、四字熟語とか、そういうのに当てはまっちゃうのってあたしはあんまり好きじゃないんだ。

 協調性?クソくらえってね。


 職場の人たちは良くも悪くも個性的な人たちだらけで、なかなか取っ組み合いのしがいがある。ジローさんという人とはすでにちょっとしたお友達で、ラーメンに連れて行ってもらった。ジローさんはあたしとおなじくプロ野球好き(彼は中日ファン、あたしはベイスターズファン)で、ラジオも聞くというから、そりゃもう話が合う。

だいたいにおいて、ラジオ好きって人に悪い人はいないもんだ。これはあたしの独断と偏見。


 女子がやる仕事としてはうんたらかんたらとさんざんおどかされたけど、やってみると意外に悪くない。いい運動にもなる。女はあたしだけということもあって、それだけでちやほやされるし。まあこれに関してはまだちょっと注意しておこうとは思っているけれど。


 まあそんな感じで、現状は好調なスタートを切ったと言っていいでしょうね!


 スタートと言えば、初日に原チャリのアクセルをふかしすぎて危うくウィリーしそうになりましたけど、それもまたいまとなっては笑い話。

 慣れてきたら昼の配達も始めようと思っている所存。

 がんばりましょう。


 HiRame

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る