第25話 ラブ米2

「好きです。」

「嫌いです。」

 男子高校生が女子高生に告白をした。しかし、撃沈した。

 告白というものは、男女の大切な行為で、勇気を振り絞って行うものである。

 しかし、この二人には毎日の日課だった。


「なぜだ!? なぜ俺様の愛の告白を受け入れない!?」

 男子高校生の名前は、渋井ハチ男。お金持ちのお坊ちゃまで、ハンサムで身長も高く、高校でも女子生徒に人気がある。

「私はチャラ男、ヤンキー、ゴミとは付き合いません。」

 女子高校生の名前は、渋井モヤ子。貧乏で、メガネをかけていて、地味な存在である。

「チャラ男でも、ヤンキーでも、ゴミでも、俺はお金持ちだぞ!」

 渋井ハチ男は無数の1万円札を学校でばら撒く。

「キャア! お金!」

「金だ! 拾え! 拾え!」

 これが渋井ハチ男の100億円ばら撒きキャンペーンだ。

「生徒は拾うな! お金は教師が回収する!」

 ばら撒かれた1万円札に男子生徒も女子生徒も全校生徒が蟻の大軍のように群がる。もちろん先生もお金に群がる。


「なによ!? あの女!? お金を拾わない気!? ちょっとハチ男様に言い寄られてるからって、調子に乗っているのよ!」

 ばら撒かれているお金を拾って、両手一杯に1万円を持っているプライドのない女が、お金に興味がないように立っているモヤ子のことを悪く言った。

「ダメ!? 聞こえるわよ!?」

 手遅れであった。

「ハチ男さま。あの女がモヤ子さまの悪口を言っています。」

「なに!?」

モヤ子の悪口はハチ男の耳に入る。当然、ハチ男に絶対忠誠を誓うチクリ部隊の生徒もいるのだ。

「俺のモヤ子の悪口を言っただと!? 許せん! ピラニア入りのプールに投げ捨てろ! いや、歌舞伎町の風俗に奴婢として売り飛ばせ!」

「はは! ハチ男さまの命令ならば何でもします! そこの女を連れていけ!」

「キャア!? お許し下さい!? ハチ男さま!?」

 こうしてモヤ子はハチ男の愛によって守られているのだった。

「今回の謝礼だ。」

「ありがとうございます。ハチ男さま。」

 チクった生徒には1臆の札束が渡される。まさに1000万分の1の確率の宝クジに当選したのと同じであった。


「はあ~。分からない? あなたのそういう所が嫌いなの。何でもお金で解決しようとするところよ。私、貧乏だからお金に興味ないの。」 

 渋井モヤ子はうんざりしている。基本的に貧乏人はお金持ちが大っ嫌いなのである。

「絶対に諦めないからな! 俺は、おまえを彼女にする!」

 彼は欲しいものは、親のお金の力で、なんでも手に入れるタイプのクズ男だった。

「これのどこが愛よ? ただの人身売買じゃない。」

 彼女は呆れて、その場を去って行く。


「おまえ! ちょっと金持ちに気に入られてるからって、調子に乗っているよな!」

 当然、彼女は学校の男子、ハチ男に歯向かい嫌われている男子高生たちに逆恨みされている。

「一緒に来てもらおうか、おまえを人質にして、国家予算並みの身代金を要求してやる!」

 彼女は10人ぐらいの男子高生に囲まれて、屋上や体育館の裏に呼び出されるのは日常茶飯事。

「メガネの陰気臭い不細工のくせに、金持ちを手玉に取るとは、貧乏人のくせに恐ろしい女だぜ! ケッケッケ!」

「・・・貧乏人。」

 彼女は貧乏という言葉に劣等感を感じている。彼女の中で怒りの感情が込み上げてくる。

「そうだ! こいつの裸の写真を撮って、金持ちお坊ちゃまにリベンジ・ポルノだ! キャハハハハ!」

「やっちまえ! 脱がせ! 脱がせ!」

 調子に乗った男たちが彼女に襲いかかってくる。

「ギャア!?」

 しかし彼女は襲ってくる男の手首を掴み軽く投げ捨てる。投げられた男の体は宙を舞い地面に叩きつけられる。

「なんだ!? どうした!?」

 不良グループの男子高生たちが彼女の見た目から想像できない強さに驚き戸惑う。

「お相手します。」

 彼女はメガネを顔から外し手に持つ。可愛い綺麗な顔が現れる。ただし目つきは獲物を狙う鷹のように鋭い。

「貧乏! なめんなよ!」

 彼女はメガネを上空に高く投げ捨てる。

「ギャア!?」

「グワァ!?」

 秒殺だった。一瞬で残りの8人を360度無着地空中回転連続キックで、相手のリーダーには耳に指を入れ押し込みで聴力を奪い倒した。

「自分の身は、自分で守ります。」

 彼女は落下してきたメガネを手で。ナイスキャッチ。

 貧乏な彼女は誰からも助けてもらえなかった。だから、彼女に甘えはなく、貧乏といじめてくるいじめっ子は、再起できなように確実に倒してきた。

「おまえはもう死んでいる。キャア。言ってみたかったのよね。エヘッ。」

 彼女は睨んで言うと、メガネをかけて不気味に笑って戦場を後にした。


 これはラブコメか?

 疑問は残る。

 ただ話の形を壊す段階でもないし、ドクターXでも水戸肛門なんかでも、ドラマも原作も同じ展開の繰り返し。そう考えると、こんなんで全然問題がないともいえる。

 あとは「ラブ米」らしく、高校を農業高校化するのと、教師とモヤ子が戦うのと、モヤ子の過去、ハチ男は人間形成の過去よりも、お金持ちの周囲の人間を書いた方が楽しいだろう。


つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る