第21話 この世の支配者2
人は生まれながらに差別がある。
スマホを持つ者は上級種族。スマホを持たない者は下等種族。スマホを持っているか、いないかというだけで人間は大学へ進学できたり、大企業に就職できるかできないかが全て決まる。
上級種族でも階級がある。スマホをただ持っているだけのおじいちゃんとおばあちゃん。普通の人間の暮らしが許される人権がある。
しかし、スマホを持っていない下級種族のおじいちゃんとおばあちゃんに人権は無い。生活保護の停止、都営住宅からの退去を命じられホームレスになる。スマホを持たない者に人権は無い。
また上級種族でもスマホを扱えるものは最上位に位置する。スマホで恋人を見つける者、不動産を取引する者、株式を取引する者、スマホでネットに動画や写真を投稿するだけで億万長者になる者たちだ。
ネットショッピングの普及は、街中から実店舗を滅ぼしていった。右肩上がりのネットショッピング会社。逆に街の大型店から小さな商店街は90パーセント以上が破壊された。これは東京都の銀座、新宿も例外ではない。
人間の視点でいえば、廃墟。AIロボットからいえば、普通。ただ町中から人間が消えた。買い物するロボット、観光客のロボット、警察官も郵便配達もロボットが行っている。
もう人間はスマホやAIロボットなしでは生きてはいけない。
ただ善意と悪意を併せ持つ人間の人口の減少は悪いことばかりではなかった。この世から戦争や内紛が減り世界は平和になった。また利益の追求する悪意の人間が減ったことで、工場の開発や自然破壊が減り、地球はきれいな青い水の星に戻りつつあった。AIロボットが新しい技術を開発し地球を汚すことなく、地球に優しい開発を行っているからだ。
欲の無いロボットは、欲のある愚かな人間とは違ったのだ。
次第に人は人を愛さず、人は癒しや愛情をロボットに求めた。
人間はスマホに支配され、人は人を愛することを忘れた。ただ時間だけが流れ、歳を取った独身のおじいちゃんとおばあちゃんばかりの人間世界になってしまった。高齢者が800万人、その他が200万人。あとの2000万人はホームレス。スマホを持っていない者は、人権は無く、人ではない。
人は人を愛し、人としての威厳を取り戻すのか、それとも種の存続のために、人はロボットを愛するのか。スマホに心を奪われ、時間を奪われた人間に明日はあるのだろうか。
つづく。
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