第20話 この世の支配者1
この世はスマホに支配されている。
人間はスマホを使っているのではない。人間はスマホに使われている。
人間はスマホの便利さから逃れられない。人と人との絆を無くしても。人間の心を無くしても。
RSG。リアル・スマホ・ゲーム。
日本政府はスマホによる日本国民の完全なる「支配」を始めた。
最初は税金の徴収や個人の隠し財産の把握、そして盛り上がらなかったマイナンバーカードの補填する程度のはずだった。
しかし、スマホは世界を支配した。
スマホは便利な小型パソコンとして、急速に普及していった。ネットのショッピング、オークション、SNS、動画、写真、いじめ等、全てスマホでできる世界になってしまった。
「・・・・・・。」
その結果、人間の現実の生活に致命的な悪影響を及ぼすことになった。それは人間と人間の会話を無くしてしまった。人と人が心を通わすことがなくなったのだ。家族の崩壊、初婚40才の結婚の晩婚化、ネットで人気があっても、実生活では一人ぼっちという人間が人口の多くの割合を占めた。
信じられるのはスマホだけ。
学校の休み時間。誰も会話をしない。全員がスマホに文字を打ち続けている。SNSで他人の悪口を打ち続ける同じ行動を全員がする。それは自分がいじめられないためである。スマホをやめた瞬間、自分がいじめの対象になることを学生は知っている。これは会社でも同じである。
コミュニケーションの無い時代。愛など生まれるはずがない。ホテルに行ってSEXなど処女や童貞ばかりの若者が出来る訳がない。人が人を好きになれない時代。結婚などできるはずがない。赤ちゃんが生まれる訳がない。愛するのはスマホだけ。
人間はスマホを使っているのではない。人間はスマホに依存している限り、スマホの支配する世界から脱出することはできない。
人はスマホに支配された方が幸せなのか。
RSGのAI。
リアル・スマホ・ゲームに支配された世界。人類の危機を提唱したのは人間ではなく、人工知能のAIだった。
各携帯電話会社は人件費削減、人手不足や生身の人間のパワハラ・セクハラ不祥事のために、人工知能AIにスマホを管理させることにした。街の携帯電話ショップから人間の店員を追い出し、全ての接客対応をAIの搭載されたロボットが行う。
新幹線、電車、飛行機、車の運転もロボットによる無人運転。戦車や戦闘機、潜水艦も無人で軍事行動を展開する。区役所の案内、窓口対応もAIロボット。9割の公務員がリストラされた。ロボットは偉そうな態度もとらないので、利用者の人間から好評だった。政治家もそうだ。国会議員や地方議員も5割以上がAIロボット議員が支配するようになった。
街は人間が歩くのではなく、AIロボットが街に溢れ、現実社会を支配するようになった。日本の人口は人間3000万人、AIロボット7000人。人が死ねばAIロボットを作り出し、日本社会が存続できるように1億人を保っていた。ホームレスの人間は2000万人を超えている。あとは皆、死んでしまった。
「このままでは人間は絶滅危惧種になってしまう!」
AIロボットの誰かが言った。
「アンドロイドやクローン人間ではない! 人間とロボットが愛し合っても、生身の赤ちゃんが生まれなければいけない!」
愚かで何もしない人間ではなく、純粋な人間の存続の危機を救おうと立ち上がったのもAIロボットであった。
人間は人間に戻ることが出来るのか。男と女は昔のように愛し合える日がやってくるのか。純粋な人間の赤ちゃんは生まれてくるのか。それとも人間は結婚相手や子供も、スマホや便利なAIロボットで済まそうとするのだろうか。人間はロボットの人口精子や卵子も受け入れるのだろうか。人間はベットでロボットと愛し合うのか。
つづく。
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