第14話 魔法探偵シャーロット・ホームズ4

 ここはシャーロットの通う渋谷高校の教室。 

「ガーン。」

 魔法の封じられたシャーロットは居眠りこそはしていないが、セミの抜け殻のように、ボーっと口を開けていた。

「シャーロット、シャーロット。ねえ、大丈夫?」

 シャーロットの友達の女子校生のクラスメイトのエマ・ワトソンが心配そうにシャーロットに声をかけている。

「ガーン。」

 しかしシャーロットは意識が飛んでいるのか、反応しなかった。

「うううううっ。シャロやんー!!!!!」

 エマの怒りが爆発した。

「はっ!? お昼の時間!? 食堂に行かなくっちゃ!?」

 シャーロットは寝ぼけていた。

「もう!? しっかりしてよ! シャロやん!」

「シャロやん、言うな!」

「わ~い。いつものシャーロットだ。」

 エマはシャーロットと、いつも一緒にいるのでシャーロットの性格を熟知していた。シャーロットが自分の名前にコンプレックスを持っているのを知っている。

「どうしたの? 元気がないわね。」

「実は、カクカクシカジカで。」

 説明が面倒臭いのと、説明すると字数が約300字も増えるので省略。選考1万字っていうのが、10万字で書く人には難しい。

「ええー!? 魔法が封じられた!?」

「そうなのよ。」

「シャーロットから魔法を取ったら、何にも残らないじゃない!?」

「だから口を開けてボーっとしてるのよ。」

「う~ん、納得。」

 エマはシャーロットが魔法少女から普通の女の子になったことを知った。

「良かったね。シャーロット。」

「え?」

「これで放課後は一緒に遊べるね。ハンバーガー食べたり、カラオケに行ったり、男にナンパされて誘拐されたり、渋谷の街で車を投げ飛ばして遊ぶの。」

「暴動の犯人はおまえか!?」

「バレたか。ワッハッハー!」

「はっはっは。」

 笑って誤魔化すエマだが、エマのおかげでシャーロットに笑顔が戻った。

「シャーロットがやりたいことや、できることが見つかるまで、魔法少女は少し休もう。その間は、私が第22魔法少女として、みんなの平和を守るから安心して。」

 エマもシャーロットと同じく魔法少女であった。

「エマ。ありがとう。さすが由緒正しき我が一族の相棒だわ。」

 シャーロットのホームズ家とエマのワトソン家は代々の付き合いがあった。エマの親戚にはハリウッド女優もいるとか、いないとか。

「それはお互い様よ。シャロやん。」

「だから、シャロやん、言うな。」

「ワッハッハー!」

「キャッハッハー!」

 シャーロットとエマは親友であった。

「私のできることか。」

 シャーロットは遠くの空を窓から眺めるのだった。


 ここは渋谷のスクランブル交差点。

「暴動はやめろ! スノー・クイーン! スクランブル交差点の人々を氷漬けにして!

「お安い御用です。氷の世界! ヒューウ!!!」

 雪の女王が口から冷たい息を吹きかけ、渋谷で暴動する人々を氷漬けた。辺り一面が氷の世界に一変する。

「ああ!? 今度は女の子が悪い男たちに連れ去られる!? 氷の狼! フェンリルよ! 女の子を守れ!」

「ガオー!」

 氷の狼フェンリルが悪い男たちを追い払い、気を失っている女の子を救う。

「いったいどうしたの!? まるで人々が魔法で操られているみたいに暴れている!? 渋谷に悪意が満ち溢れている!?」

 いえいえ、これが普通の渋谷です。


 ここはシャーロットのお家。

「おお! エマの奴、頑張っているな。これなら私が魔法が使えなくても大丈夫だ。ゆっくり休もう。キャッハッハー!」

 のんきにシャーロットはテレビのニュースの生中継を見ていた。

「ああ!? あれはストリーム!?」

 その時、テレビの画面に魔女王の使い魔のストリームが映し出された。シャーロットの魔法を封印した者だ。

「キャアアア!」

 ストリームの攻撃魔法にピンチになるエマ。

「エマ!? いけない! エマを助けに行かなくっちゃ!」

 シャーロットは親友のエマを助けたい。

「でも、今の私は魔法が使えない!? 私が行ってもエマの足を引っ張るだけ!?」

 悩み苦しむシャーロット。

「それでも、きっと私にもできることがあるはずだ! 魔法が使えなくったって、私にもできることがあるはずだ!」

 自分の中で覚悟を決めたシャーロットはスッキリした表情をしていた。

「私に使えそうなものは、空飛ぶ魔法のほうきと、魔法の獣の卵、そしてとどめの魔法のバスターランチャー。これだけあれば、なんとかなるはず。エマを助けに行かなくっちゃ!」

 シャーロットは渋谷のスクランブル交差点に向かった。


 ここは渋谷のスクランブル交差点。

「ギャア!? 霜の巨人ヨトゥーンが!?」

 ストリームの炎の矢に下野巨人ヨトゥーンの胸が貫かれた。

「オーディン! あいつを倒して!」

「おお!」

 氷の戦士オーディンがグングニルの槍でストリームを攻撃する。

「ファイア・アロー・貫通。」

「グウワアー!?」

 ストリームの炎の矢がオーディンの胸をも貫いた。

「オーディン!? なんて強いの!? まさか!? あなたは魔女王の使い魔で、シャーロットの魔法を封印した人なの!?」

「あら? あなたは炎の魔法少女のお友達なの? 魔女王様のことを知っているのなら死んでもらいましょう。」

「し、しまった!? 言うんじゃなかった!?」

 エマ最大のピンチ。

「ファイア・アロー・乱れ打ち。」

 ストリームが炎の矢を周囲一帯に数百、数千と打ちまくる。

「ギャア!? 助けて! シャロやん!」

 エマは諦めて目を閉じる。

「あれ? 痛くない? 矢が刺さって死んでないのかな?」

 エマは恐る恐る瞳を開ける。

「シャロやん!?」

「だからシャロやんと気安く呼ぶな!」

 エマのピンチにシャーロットが魔法の空飛ぶほうきで助けに来たのだった。

「助けに来てくれたのね。シャーロット。」

「当たり前よ。私たち友達でしょ。」

 シャーロットとエマは友情の絆で結ばれている。

「あら? 魔法も使えない普通の女の子が何の用? まさか魔法も使えないのに私と戦うつもりなのかしら?」

「そうよ。魔法が使えなくったって、普通の女の子だって、私は私のできることをやるだけよ!」

 シャーロットは自分ができること、精一杯目の前の敵と戦うことを誓うのであった。


 つづく。

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