第7話 ホラー
「暗いよ! 怖いよ! 狭いよ!」
「恨めしや~。怖めしや~。」
「お金怖い! 饅頭怖い!」
「なんて定番をホラーと思ってはいませんか? テレビから女が出てくるとか、井戸から女が出てくるとか、SNSしたら女が出てくるとか、そんなをホラーと思っていませんか? それは大きな間違いです!」
教師で、ライト文芸部の顧問の伊集院苺が熱弁している。
「なぜなら! カロヤカさんの存在自体がホラーだからです!」
「え? 私って、お化けだったの?」
「その通り! あなたみたいな人間はいないのよ! いてはいけないのよ!」
「その設定は困るぞ! 苺ちゃん!」
そこに部長の春夏冬天がやって来る。
「誰が苺ちゃんだ! 伊集院先生とお呼び!」
「い、いちゃ、いじゅうちぇんちぇい。」
苺は天をヘッドロックする。
「苺先生、カロヤカさんは、ホラーコンテストようの絶対無敵だけど、お化けは怖いというギャップを売りにした子なんですから、カロヤカさん自身をお化けにするのはどうかと思いますよ。」
「誰が苺先生だ! 伊集院先生と呼べ!」
「きゃめてくじゅさい、いぎゅういんちぇんちぇ。」
苺は麗をコブラツイストする。
「伊集院先生! うちの娘をお化けにしないで下さい!」
「あなたは?」
「花の母親です!」
そこにカロヤカさんの母親の軽井沢桜が現れる。
「花?」
「あの・・・花は、私の本名です。テレテレ。」
「花!? カロヤカさんていう名前じゃなかったの!?」
「はい、実はそうなんです。」
「知らなかった!? カロヤカさんの名前が花だったとは!?」
ライト文芸部の関係者全員がカロヤカさんの名前を初めて知った。
「た、たしゅけて!? ちゃんと、いじゅういせんちぇいって、いいましたよ!?」
苺は、桜を四の地固めで締め上げる。
「すいません。流れで、つい。」
「いいえ! 許しません! 教育委員会に訴えてやる!」
「お母様!? お許しください!? カロヤカさんのお母様!?」
桜と苺は消えていった。
「カロヤカさんは、お化けが苦手なの?」
「カロヤカにお任せあれ。」
「あ、逃げた。」
「カロヤカさん、決めゼリフを意外に気に入っているんだね。」
「カロヤカにお任せあれ。少し違うな? カロヤカにお任せあれ。こうだな。」
「決めポーズの練習までしてるよ。」
カロヤカさんがお化けに弱いのかは、今だに謎である。
「キター! カワカド第5回コンテストの結果!」
ライト文芸部の部室で、いつものように部長の天が騒いでいる。
「なんですか? カワカド第5回コンテストって。」
カロヤカさんたち、笑と大蛇は知らない。
「あのね。私たちはライト文芸部でしょ。だからライト文芸のコンテストには、作品を作って応募してるのよ。」
麗が説明してフォローする。
「ええー!? ライト文芸部に、まともな部活動らしい活動があったんですね!?」
「驚くところは、そこかい?」
最近は、カロヤカさんがツッコミを担当している。
「部長が驚いているということは、部長はコンテストで優勝したんですか?」
「天は、中間選考にすら残れてないわ。」
「なんじゃらほい!?」
呆れて怒るカロヤカさんたち1年生部員。
「弘法も筆の誤りというやつだよ。ワッハッハー!」
「笑って誤魔化すしかないってやつです。」
天はライト文芸コンテストに参加はするが、賞を取ったことはない。
「カキカキ。」
「カロヤカさん、何を書いているの?」
「次のコンテストに私も応募してみようと思って。」
カロヤカさんも次回のライト文芸コンテストに作品を出すつもりだった。
「なになに、タイトルは「ライト文芸部の部長の悲惨な日々」!? これって、部長じゃん!?」
「部長の人生って、おもしろそうだから。キラーン。」
「真顔で言うな!?」
「それに、カロヤカさんが応募したら、グランプリを取ってしまうじゃないか!?」
「確実にグランプリを取って、華々しくラノベ作家デビューするだろうな。」
「やめてくれ!? 私、もう外を歩けません。シクシク。」
どんな話題でも賑やかなライト文芸部だった。
「でもあれですね。カワカドの第5回コンテストの受賞作を見ても、普通ですね。」
「面白くないだろう。」
「まだ、横浜駅FCの方が選考は攻めてましたね。」
「5回やってヒット作が無いから、終わりだよ。」
「カワカド=ホモ作品投稿サイトって感じになっちゃったし。」
「本当に出版社が選んだのか? と疑うくらい無難な作品ばかりですよね。」
「普通で、売れないだろうな。別に大賞でなくてもいいやって感じ。」
「最低限の売り上げの確保で、上司から怒られない無難な作品を選んだって感じですね。」
「全部門、受賞作なしの方が、カワカドの株価は上がりましたね。」
「また売れない物ばかり書籍化するから、カワカドの株価は下がりっぱなしだ。」
「虚しい。創作意欲が無くなるくらい悲しい。」
「不正、星やアクセス数の水増し不正ばかり。そんなんが大賞を取るから、最初から大賞者が決まっていたとか、カワカドと契約している作家さんしかグランプリになれないとか、簡単に連想できてしまう。もうコンテスト事態が終わってるよ。」
「担当がボーナス無くなるから、責任取りたくなくて、ホモの2匹目のどじょうを狙ったり、他で売れてそうな作品の類似品をグランプリにするとか、やめてくれ。」
「ライト文芸を書いている人、全てを殺してしまうぞ。」
「第1回から、大賞が決まってる出来レースのコンテストとは言われてきたが、第5回も本当に酷いものだった。」
「調べるとカワカドのラノベ担当の時給は1000円で土日休みらしい。そりゃあ、働く気もないわな。」
「本当に創作意欲を無くしてくれた。新しいものを生み出さなくても、2匹目のどじょうや、コピーやパクリ作品でグランプリが取れてしまうのだから。」
「バカバカしい。」
「ということで、カロヤカさんは、過去作を読んで、整理して処分していこう。駄作ばかりだからな。」
「はい! 新展開ですね!」
「違う。創作をやめたら、過去作の整理にたどり着いただけ。」
「カロヤカにお任せあれ。」
本当に気持ちの切り替えが必要だ。グランプリ作品たちを見てゲッソリした。5年やって、ヒット作がゼロ。本気でカワカドの人間は何が売れるか分からないのか、給料だけもらえば、ラノベ作品なんかどうでもいいんだろうな。株主総会に出席して、社長に質問したくなる、選考に対するやる気の無さだ。きっと身内ばかりを選んだのだろうな。悲しいな。大人の事情。
「すごい怨念。まさにホラーだ。」
つづく。
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