とある生活


1




その人は気ままに動く


時計をもっている



その人はいつでもえさをほしがる


9匹の金魚を飼っている



その人は芽の出た


水栽培の球根をもっている




その人はおなかがすく頃になると


街へでて


一番お腹がすいていた時立っていた


店の中でご飯を食べる



その人は


ロックンロールという名の


犬を飼っている


昔はクラシックという名の


猫を飼っていたが


それが老衰で死んだ後


金魚を飼ったので


もう猫は飼えない




ロックンロールはいつも


その人のベッドで眠る




その人は


勝手気ままに


時を刻む時計を見て


ベッドの支度を整える




その人は銀縁の丸いメガネを


ちょっと上げて本棚を見る


そして今日は


なんの本を読もうかと思う




2




その人は真夜中に


はね音をたてる


9匹の金魚を飼っている




その人は時々


詩を書く



その人は決して9匹の金魚に


わけへだてをしないのを


金魚は知っている




そしてその人の時計が


時々止まるのは


家の者みんなが知っている



その人は


球根の水を取り替える




その人は書いた詩を


お金持ちのところへ持っていく




お金持ちはその人に


膨らんだ財布を渡す



その人の詩は


お金持ちの名前で


たくさんの本にのる




その人は


ある日綺麗な花を咲かせた


水栽培の球根をながめ



ロックンロールと袋に入れた


金魚を連れて


旅に出ることにした




その人の後ろ姿を


勝手気ままに動く時計が


花とともに


見送っていた




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る