第2話 セーフティーゾーンーーその1
セーフティーゾーン。ここでの争いは御法度。緊張感漂うフィールド内とは全く違う趣がある。どのチームも作戦会議をしたり、道具の手入れをしたりと、戦いの準備を怠らない。だが、初心者のチームKOURYUUははじめのうちはそうではなかった。
「わぁ! 優姫。オットナー!」
「すごい似合ってるわよ」
「ありがとうございます。お2人だって、とってもお似合いよ」
「3人は良いわよね。オトナな体型で!」
「ふふふ。しいかのも、かわいいわよ」
「ま。野性では迷彩も白黒も同じってことっしょ」
「確かにそうね。それに撃たれる前に撃てば、格好なんて関係ないわよ」
「でも私にできるかな? 人を撃つなんて……。」
「あゆみ。何、弱気なこと言ってんの!」
「玉は当たっても痛くないし、怖がる必要なんかないわ」
キャッキャとじゃれ合うあゆみとまりえと優姫に、フルフェイスの完全防備を身に纏ったあおいが絡む。それにつられてパンダみたいなしいかが反抗期振りを発揮すれば、まことが毒付く。いつもならその輪にアイリスもいるのだが、このときはいなかった。
「ははは、みんな盛り上がってるね。はい!」
「鱒宮司! ありがとうございます」
1人ハグれてアンニュイな表情を見せるアイリスに、太一は缶ジュースを放り渡して言った。この夢のシチュエーション、太一は前からやってみたいと思っていたので、自然にドヤ顔になる。そんな顔でさえ、アイリスにとっては男前に見えてしまう。
「何か、問題でもあるの?」
「い、いいえ。大丈夫です!」
太一がただ夢を叶えたかったわけではない。アイリスが何かを気にしているのは明らかだった。それが何か、太一には分からなかっただけである。
「鱒宮司、必ずお守りします! この命に代えても」
「ははは、大袈裟だよ。単なるサバゲーなんだから。楽しもう」
そう言って太一は、親指を立てる。これも夢だった。
「ちょっと、そこの2人。何いちゃついてんのよ」
遠くからあおいの声が聞こえる。アイリスは衣服のボタンを気にしていることを太一に気付かれないようにして、あおいに応じ、7人でキャッキャと騒ぐ。太一はそれを見ているだけでも幸せを感じた。
「KOURYUU。交流ってことか。舐めた名前だ」
「醜男1人に美少女7人か。なんかムカツク!」
「サバゲーは遊びでないことを、教えてやる」
最近メキメキと力をつけてきた『チーム卑裏悪』の中心メンバー達は、新参の太一達に敵意をあらわす。
「そんなにムキになるもんじゃないよ」
「そうさ。サバゲーは紳士淑女のスポーツなんだから」
「た、たかたんさんとだっさんさん……。」
たかたん、だっさんは、『チームSAIKYOU』のメンバーだ。2人共伝説級の強さを持っている。チームSAIKYOUは名前の通り『東京と埼玉に住む者』だけで作られたチームで『最強』と言われている。だが、そのモットーは『楽しまなけりゃサバゲでない』という割と軟派な組織でもある。そんなチームからもチームKOURYUUは注目されることになった。
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