第9話 「七月」

第9話

     

「七月」  パステルナーク 作  / ( )内は、団地スケッチを乙音メイ


家の中を幽霊がさまよい歩く  (ゾンビーズ)

一日中じゅう頭のうえに足音がして  (ドタドタ)

屋根裏部屋には影がちらつき  (屋根裏の不法の侵入者よ)

家のなかを家霊がさまよう  (どうぞ謎を明かしてください、と外にいる霊。もう部屋の中はこりごり)


そこいらを勝手なときにぶらぶらして (ストーキング)

なにもかも邪魔だてする  (時間おかまいなし)

部屋着姿で寝台のほうへ忍び足  (寝静まった寝室を覗きみる)

食卓のテーブル掛けをはぎとる  (毒霧がテーブル掛けに舞い降りる)

     

戸口で足もぬぐわずに  (厚顔にも)

吹きぬける旋風に乗って駆け込み  (風に乗せて)

踊り子がわりのカーテン相手に  (まみれる)

天井までも舞いあがる  (毒粉)


このいたずらの無法者はだれ  (他国からのお尋ね者たち、その子孫)

この亡霊、二重人格はなに  (なりすますのはお手の物)

あれはうちの訪問客  (団地に)

夏の休暇の別荘客  (屋久島に)


かれの短い休暇のあいだ  (WANTED!)

家をそっくり貸してある  (今のうちは)

雷雨の七月、七月の空気が  (レーザー光線)

うちの部屋を借りたまで  (侵略も得意)


七月はたんぽぽの綿毛や  (くさばな可憐な)

あざみの葉を着物につけたまま  (あざみ咲くここは屋久島)

七月は気ままに窓からはいってくる  (風のよく吹く)

いつも声高に話しながら  (一族怒涛)


広野育ちの蓬髪の汚れた服の男  (洞穴の野宿つづきで)

菩提樹や雑草の匂い  (瞑想に耽ればよいものを)

ビートの葉やういきょうの香気を漂わせた  (中央アジアの)

七月の草原の空気よ  (流れ者よ)




 ハイヤーセルフで天界の夫のサナンダ・ジーザス(イエス・ヨシュア・ベン・ヨセフ)の、別の化身だったボーリス・パステルナークと、時空を超えて共演できました。パステルナークご本人も、

「もちろん、使っていい」

と言ってくださいました。

( )の中が乙音メイです。

 悲喜こもごもの超時空共作詩作品『七月』を、お読みいただきありがとうございます。



 2019年1月31日           著者 乙音メイ





◆参考

ボリース・パステルナーク


1890年2月10日~1960年5月30日

モスクワ生まれ。


父は画家レオニード・オーシポヴィチ・パステルナーク

(ロシア正教に改宗せず。ユダヤ名は、

アブラム・レイブ・ベン・ヨセフ・パステルナーク)。


一節によれば、パステルナーク家は、

ローマ人によるエルサレム破壊後、スペインに逃れた

ダビデ王朝の末裔で、古代アバルバネの出自

この家系は代々、哲学者、詩人、国政家を輩出

15世紀末、異端審問の裁判でスペインを追放されガリツィヤへ逃れ、やがてオデッサへ入ったという。



母はロザリヤ・カウフマン。

A.ルビンシュテインの弟子、ピアニストとして活躍。ボリースの誕生とともに演奏活動から退く。

同じくオデッサのユダヤ家系。


     ※『パステルナーク詩集』工藤正弘 訳 小沢書店刊 の巻末より



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