5月29日(水) 17時50分 教室
拝啓
蓮水 夏梛斗 様
先日は、突然のお手紙失礼致しました。
誠に申し訳御座いません。
ですが、やはり
再度、失礼とは思いますが、こうして筆をとった次第でございます。
直接お会いして気持ちを伝えるのが、道理だとはわかっておりますが、その勇気がない私をお許しください。
それでも、私は蓮水様のことをお慕い申し上げております。
一目一言と常々思っておりましたが、人とは欲深いものでございます……
一度筆をとると、この気持ちを抑えることが出来ませんでした。
…………
………
……
もし、もしも……私に少しでも蓮水様のお気持ちを知る資格があるのでしたら、不躾ではございますがご返信を頂けると嬉しく思います。
令和元年 五月二十六日 かしこ
以前とはまた違った可愛らしい封筒に入っていた便箋には前回と同じく美しい字で思いの丈が綴られていた。
メールや手紙からでも何となく相手の心情というか、気持ち的なものが伝わってくることがある。
それによく似た感じを僕はこの手紙から感じる。
普通に考えれば、机のに知らぬ間に入れられている手紙、おまけに差出人もなく恋慕の情が綴られているのだ。
気味悪いと思うほうが当然ではないだろうか。
しかし、僕は不思議なことに最初からそういった感情は湧いてこなかった。
それは文面から伝わってくる真摯な気持ちであり、第六感的な直感であるのかもしれない。
さて、本当にどうしたものか……
返事をするにも差出人はわからないし、ポストに投函するわけにもいかない。
かと言ってこのまま何もせずに放置するのも気が引ける。
「とりあえず……返事書くか……」
でも僕は手紙なぞ書いたことがない。
よく頑張っても小学校の頃に母の日に贈った手紙くらいだ。
一応当たり障りのない便箋を買ってきておいたので、それを机の上に置いて僕は考えこむ。
考える。
考える。
考え……何を書けばいいんだろ?
いざ返事を、と思っても何も思い浮かばない。
名前を聞く?いやいや、それなら最初から書いてるだろうし……
会ってみたい?う〜ん、会うのが恥ずかしいから手紙なんだよな……
結局、夜中までかかって僕は僅か数行を書くのが精一杯だった。
ところで、これどうやって届けたらいいんだろ?
……机の中にいれといてみようかな?
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