第2話

日が暮れ始め薄暗くなった森を歩き続けると舗装された道を見つけた。

このまま森を歩いていたいと思い始めていたがここは素直に道に沿って進む。

森の中は暖かく、木漏れ日が木々で隠れた地面を照らす。単純ではあったが気持ちが落ち着く。居心地がいい場所にはいつまでも居たい。

少し道端に座って体を休める。どれぐらい歩いただろう。時計も携帯もなく、しかし時間も距離も頭に浮かべず歩いていただけだったため何も分からない。一時間以上は歩いたと思うがやっと見つけた人工的な要素が道一つ。しくじったかも、と自嘲する癖が出て、思わず失笑が漏れる。思考を巡らせるが何も思い付かない。

(…歩くか)

自棄になりそうだったが観念し、再び道にそって歩くことにした。

すっかり暗くなった。天気がいいのが幸いで星がちらほら夜空に浮かんでいた。幾らか欠けた月の明かりを頼りに歩く。腹は減ってないため今日は何とか凌げるかも知れない。明日は分からないが。

そういえばあの森には食べ物らしい食物が見当たらなかった。鳥のさえずりが聞こえていたし動物やら虫やらはいたような気がするが。だがどうであれいざとなればまた森に入って探すしかない。

ようやく何メートルか離れた場所に建造物らしき物体が並んだ場所を視認した。ビルのような建造物を見つけられたのは窓から見える灯りのためなのだが何故か松明の火のような可燃性っぽいのが気になる。

振り返って森を見る。日中も静かだが夜は少し圧を感じさせる程に静寂だった。

しかし空気は心地よく、何故か惹かれる。

気付くと野外に、しかも森の中にいるという得体の知れない状況に陥っているがこの時はこの森を出たあと、もしまた来れるならこの中を歩いてみたいと何故か思った。


森を遂に抜け、遠くから見た建造物のある集落のような場所に出た。

ような、というのは四階建てのビルような建造物がいくつも建っているだけで人の気配が全くしなかったため。

そして灯りの正体は本当に松明だった。よく時代もののドラマや映画で見るセットのような松明。それが建造物の周りや窓から所々見える。火事にならないのか、と不安になる程度には配置されている。



先程はこの建造物は四階建てばかりだと思った。しかしよく見ると五階以上あったり真っ直ぐそそりたっているものだけでなく傾いていたり、窓の大きさもバラバラだったり、建造物としては異常な部分がある。適当に作ったか、あるいは急ごしらえで建てたのか。

立地に失敗しているだけ。

この松明もなんだ?自分は素人だが絶対にさっき灯したばかりだと思う。パチパチと音をたてて、木の枝を組み合わせたような着火台?から近づくと熱さを感じる程の火の塊が収まっている。上に向かって燃え、小さく火花が上がる。


誰が、ここで、何していた?建造物が立ち並ぶ集落らしき場所を歩いていく。







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さらば勇者 ひとし @takuhitosi

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