さらば勇者
ひとし
第1話
ダルい体を動かして仰向けになる。薄く雲が空を覆い、鈍い光が空を、視界に明るさを与える。
実家の窓からよくこんな風景を見ていた。居間から見えるその風景は温かみがない訳ではなく、かといって暗さを与えないというとそうでも無い。
風景はその暮らしを思い出させた。
二月二十日
正午を過ぎ、昼飯を軽く済ませた伊丹久広は気がつくと森の中にいた。晴れていて道の先は木が無数に生えている。
空気は涼しいが冷え性だったせいか指先は冷たく感じる。
平らな地面の土もまた一層触っていて冷たさを感じさせる。
何が起きたのか、似たような場面、状況を自分の記憶から推測する。
分かるようで分からない。理解出来そうで出来ない。
今の今まで実家にいたのに、何故ここに?
体は動く、怪我はない。太陽は向かって左側にあった。心臓は一定のリズムで動いて、緊張感から、得体の知れない重圧から小さな一歩進む度に意識してしまう。まだ何も始まってないだろうし、何もしてない。
人に会いたい。普段は道に迷っても極力しないことだが誰でもいい。どっちに進むのか誰かに尋ねたかった。
道は舗装されていないが地面は平らで歩きやすい。
太陽の落ちてく方向に早足で歩く。
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