無権の魔王

2話 日記

　西暦40XX年4月10日

　マキリス神聖連合国（しんせいれんごうこく）にて。特に問題はなし。脅威となるであろう人物は6人。6人の魔王の内、2人の人物像・極魔術（きわみまじゅつ）の5割は解析済み。

　サリア＝イザベル

　その生涯を刀に捧げ、毎日数え切れないほど居合の型を振っている女性。

　その刀の腕は超一流であり、連合国内に勝てる人間はいない。

　極魔術（きわみまじゅつ）:『？？？』

　居合に関する魔術。詳細は不明。

　マゼンダ＝アルディム

　王立魔導学院（おうりつまどうがくいん）の魔術図書館の中に住む変わり者。この世のあらゆる書物を読み解き、あらゆる魔術を研究し尽くしたと噂されているが、詳細は不明。

　極魔術（きわみまじゅつ）:『？？？』

　この世のあらゆる魔術を再現できると噂されているが、詳細は不明。

　他は詳細不明。今後調査を進めていく。

　西暦40XX年4月18日

　マキリス神聖連合国にて、新たな魔王が誕生。詳細は不明。今後調査を進めていく。

　西暦40XX年4月19日

　王立魔導学院にて、新たな魔王の誕生を祝う会が開催される。これで新たな魔王の極魔術（きわみまじゅつ）が分かる……筈が不発。結局、極魔術（きわみまじゅつ）の詳細は分からず終（じま）い。今後調査を進めていく。

　西暦40XX年4月20日

　対象に接触。いつもの様に相手に取り入る方法を使う。最初は警戒されているのか、上手く取り入れられなかった。

　西暦40XX年4月26日

　今日までに、なんとか対象の概要を把握。今日、対象を警戒区域に連れ出し、詳細を調べる予定。

　対象:

　ハルト＝キルクス

　今までは何の変哲も無いただの一般生徒のはずだった。しかし、彼は親魔性が高く、魔素が目で見えるとの噂がある。詳細は不明。

　極魔術（きわみまじゅつ）:『無限の幻影（スキルオーバー）』

　あらゆる魔術を同時に発動する事で何も起きない魔術（本人談）

　予定変更。対象にまとわりつく女に邪魔をされる。対象自身も警戒を強めた為、警戒区域に連れ出すのは中止する。その後はいつもの様に周りの生徒に取り入る。

　西暦40XX年5月3日

　対象が対象の親友に警戒区域に連れ出される。対象の親友は魔王候補の別の人間と結託し、対象を抹殺する計画の様だ。しかし、お陰で対象の極魔術（きわみまじゅつ）の概要を把握。

　極魔術（きわみまじゅつ）:『無限の幻影（スキルオーバー）』

　あらゆる魔術を同時に発動させる魔術。その範囲・形は自由自在。魔術発動後にその形を変更する事も可能。あらゆる魔術を同時に発動させる為、その仕組みを変える事で特定の魔術を発動させる事も可能。今回は時間回帰の魔術を発動させた。

　今後の対象の成長によってはかなりの脅威になるだろう。この魔術を使い、対象は魔王候補を1人撃破。やはり魔王と魔王候補の間には大きな隔たりがある。今後も対象及び他の魔王の観察・調査を続行していく。