7話 決闘

 魔術試験場。

 ハルトも『無限の幻影スキルオーバー』の練習で使った場所。


 そこに2人の女性が相対あいたいしていた。


「どうしてこんなことに……?」


 ハルトは頭を抱えながらマナとサラが火花を飛ばし合っている様子を眺める。


 話は15分前。

 どちらがハルトを自分の用件に付き合わせるかで揉めていた時の事だ。


「こうしていてもラチがあかないわね」


 マナがそう発言する。


「そう言うからには何か案があるんですよね〜?」


 サラが尋ねる。


 どちらがハルトをもらうにふさわしい(?)かを決める方法を。


「決闘をしましょう」


 決闘は学院内でもよく使われる物事を決める方法だ。


 決闘、と言っても、素手ゴロの喧嘩を何でもありノールールで行うわけではない。



 決闘の方法は単純。


 お互いに魔術以外では壊れない魔術製の首飾りを装着し、それを先に破壊した方の勝ち。


 首飾りには2つの魔術が施されている。


 1つは首飾り自体が魔術以外の衝撃を受け付けない魔術。

 魔術以外では一切傷が付くことはない。

 たとえどれほど大きな重量の物を乗せても、この魔術を掛けた物は角砂糖でも壊れなかったほどだ。

 逆に魔術が掛かった衝撃であれば、元々の強度と変わらない。


 もう1つは首飾りの装着者の装着後の傷の一切を修復する魔術だ。

 これは外傷や肉体の状態異常を治すだけであって、それまでに受けた衝撃や感覚を治すことはできない。

 あくまで体を正常状態に戻す魔術だ。


 この2つの魔術を掛けることには単純な理由がある。


 決闘はあくまで魔術の練度の高さを競わせる為に行うためだ。


 魔術の使い方は千差万別。

 同じ魔術ならともかく、別の魔術を同時に競わせる方法はない。


 そんな時に使われた方法がこの決闘方法だ。


 いかに相手から首飾りを守るか。

 いかに相手の首飾りを破壊するか。


 自分の魔術と知恵を駆使してお互いにしのぎを削り合う。


 そのために『ダメージは一切受けず、相手の首飾りを先に破壊する』というシンプルなルールにしてあるのだ。


 そうして、決闘をするべく、マナとサラは魔術をどれだけ使用しても大丈夫な魔術試験場にて、準備を進めていた。



 そして、全ての準備が整い、2人は相対あいたいしていた。


「痛い目にあっても知らないわよ」

「その言葉、そっくり返します」


 2人はお互いに睨み合う。


「ハルト、審判をお願い」


 マナがハルトに審判をすることを要求する。


「あ、ああ……」


 最早3人で用件を済ませればいいんじゃないかと思いかけているハルトは断れないまま微妙な返事を返す。


「サラ、これはあくまで用事の優先権を決めるだけだから……」


 ハルトはやんわりとサラを嗜める。


 彼女は魔王だ。

 つまり、他の人間に比べて魔術を究めているのだ。

 どんな魔術分野をどれほど究めているのかは定かではないが、魔術では他の追随を許さない筈だ。


 サラはハルトに笑顔で答える。


「本気でぶっ潰す!!!」


 これはダメだ。


 ハルトは本能的に直感した。


 もうなるようになれだ。




「始め!」



 ハルトの声を合図に魔術の戦闘が始まった。

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