第11話 9月

 五分前に約束の場所に行くと、金城君はもう来ていた。


「ごめん、待った?青木君は?」


「青木?あいつ多分部活だと思うよ。」


 えっ二人っきりですか?


「青木とはたまにスイーツ食べに行ってたんだけど、あいつといるとなんかさ。

 この前も二人でタピオカドリンク飲みに行って、違う味頼んで交換してたら、周りの女子に『キャー』とか言われちゃって、気持ち悪がられたみたいだし。」


 いや、私だってキャーキャーいうわ、それ。

 青木君の顔が見えない角度の人は超ラッキーなもの見れたんじゃない?

 私は金城君に、青木君が後姿美男子で、二人が周りに気持ち悪がられてないことを説明してあげた。


「もうあいつと行くのは止めよう。」


 そうだね。私と一緒の方がまだましだろう。それにしても二人きりですか。



 かき氷って、平安時代の清少納言が、夏の暑い日にあまずらのシロップをかけた削り氷を食べたって古文で習ったけど、こんなふわふわした氷を食べたことはないだろう。

 しかも一般庶民でも食べられる。練乳を考えた人、ありがとうございました。


「青木君って、まだサッカーやってるんだね。金城君は、部活何?」


「僕?卓球だよ。」


「えっそうなの。私の弟も卓球やってるよ。卓球やってる人って、ひょろっとした感じの人が多いみたいだけど、金城君は体が、がっちりしてるね。」


 金城君は『わかってくれてますね』、という顔で微笑んだ。


「実は、中学の時の塾の帰りに、酔っ払いに絡まれそうになってさ。僕がガチムチの体だったら絡んでこなかったと思って。筋肉あった方が生きていくには有利かと、筋トレして肉体改造してるんだ。」


 金城君、あなた、もしかして私の仲間ですか!



 私はずっと、誰にも言わずにちょっとづつダイエットしてきた。

 その時、弱音を吐きたい気分だったし、金城君なら学校も違うし、わかってくれるかな――。そう思って話し出したら、止まらなくなった。


「青木君には言わないでほしいんだけど、実は私―――。」


 70kgあったこと。

 こっそりダイエットしようと決心したこと。

 お菓子を食べるのを止めたこと。食事を変えたこと。

 朝晩体重を記録して、ウォーキングをしたこと。 

 高校まで姑息に選択したこと。



「一色さん、よく頑張ったね。いいんじゃない?」


 金城君はびっくりした顔をして聞いていたけど、私が話し終えると優しく微笑んで、自分のかき氷の上にのっていた栗を私のかき氷の上にのせてくれた。


「ありがとう。でも、あきれてない?」


「うーん、70kgの一色さんを見てないからわからないけど、今の一色さんは頑張り屋でかわいいよ。来月もまた、スイーツ食べに行こう。」


    体重ちょっと停滞中、 59㎏。


     








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