第9話 7月
七月下旬の花火大会は、私が声を掛けて弓道部の都合のつく人みんなで行くことになった。私は気合を入れて浴衣で出撃した。
弓道部員の浴衣姿は、最強だ。
いつも道着と袴で練習しているせいか、浴衣を着慣れている感がハンパない。
しかも、立ち振る舞いが自然で美しい。
私や、他の一年生はまだまだぎこちないが、二、三年生の浴衣姿は、若い子の着付けを鼻で笑う和服に詳しいおばさま方でも文句のつけようがないだろう。
この集団の一人であることが誇らしい。
「水川先輩、いつもより武士感が二割増しです!」
「武士感ってなんだよ。」
「桃華先輩の浴衣、とっても素敵です!」
「あら、絵里、ありがと。でも浴衣だけ?」
「もちろん、本人もです!」
「けんちゃん、その浴衣、渋くていいわねぇ。高いやつじゃない?」
「うん、、よくわかんないけど、兄貴が持ってたやつだよ。」
「マリ先輩、その髪型、どうなっているんですか?」
「私にもわからないの。」
「ちょっと、甲斐くん、色っぽいわねぇ。」
「ミカリンも可愛いじゃん。」
キャーキャーと大騒ぎになり、スマホで写真を撮りまくった。
もちろん、桃華先輩の写真は何枚も激写した。
花火もきれいで、心に残る夏の思い出になった…。
水川先輩と桃華先輩のことは、みんなに頼んで二人で帰れるように仕組んでもらった。
運が良ければ、桃華先輩の下駄の鼻緒が切れるか、二人が不良に絡まれて水川先輩が活躍するだろう。
桃華先輩は、下駄じゃなくてとってもかわいいサンダルを履いていた気がするし、ガタイのいい水川先輩に絡みたくなる不良はいないと思う。
でも、夜道は暗くてドキドキするし、なんとかなるだろう。
ごめんなさい。考え付きませんでした。明日謝ろう。
次の日の部活で、私は水川先輩に『ありがとうな』とキラキラした笑顔で言われた。
夏休みが終わる頃、桃華先輩にも『友香がアドバイスしてくれたんですって?ありがとうね。』とマドンナの微笑でお礼を言われた。
何があったのか、ものすごく気になるが、桃華先輩が幸せなら、それでいい。
それにしても、私の両親、すごいなぁ。
60㎏。あと少しで、50㎏台!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます