第7話 5月

 生物の担当の紺野先生はアラサーでインテリメガネが似合う。大抵は三つ揃いのスーツだが、たまに白衣を着ているのが萌える。

 新婚で愛妻家という噂で、マリッジリングが色っぽい。


 私とミカリンはすっかり先生のファンになって、先生に名前を覚えてもらうためにも、せっせと生物を勉強していたが、マホは社会の日比野先生がお気に入りのようだ。


「ミカリン、私、生物の質問してから行くから、先に部活行ってて。」


「友香、どこがわからないの?私、教えようか?」


「やめて~質問がなくなるわ~」


 ミカリンには内緒だが、紺野先生には理系、ということもあって、姑息にも数学まで教えてもらっているのだ。

 生物のついでにちょっとだけだけど。数学の爺様先生よりわかりやすい気がする。

 私は紺野先生が大好きだ。

 でも先生には愛する奥さんがいて、私と恋愛関係になることはない。

 だから安心して先生にまとわりつくことができるのだろう。



 中間テストの前日にも生物室で数学を教えてもらい、そういえばと生物の問題集を取り出して、紺野先生ににじり寄った。


「先生、この問題なんですけど…。」


「どれどれ、これ、うっ、ゲフンゲフン、そうだ、用事を忘れてた。もう行かないと。すまないけれど、だれか友達にでもきいて…。」


 先生は、早口で言うとすごい速さで去って行ってしまった。

 にじり寄りすぎたか…。何だったのか、あの慌てた態度。



 その疑問はあっさりと翌日に解決した。

 私が昨日質問したのとまったく同じ問題が、テストにバッチリ出ていたのだ。

 もちろんできましたよ。


「質問に答えられなくて、すまなかったな。しっかり勉強していてえらいぞ。」


 テスト後に紺野先生は褒めてくれた。うれしい。これからも頑張ろう。

 全部の教科の先生が全員イケメンならいいのに。


     先生に太っていると思われたくない 61・5㎏。

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