第3話 11月
夕食でキノコとホウレンソウの和え物をゆっくりと味わっていた時だった。
「友香、あんた美容院に行くっていうからお金渡したけど、髪、何も変わってないんじゃないの。」
お母さんの指摘に焦る私ではない。
お金は美容院に行く前に立ち寄った本屋でダイエットの本を買うのに使ってしまっていた。
でも、言い訳はちゃんと考えてある。
「すごく混んでで…それに、店を変えたいなあって思ってるんだけど、ほかの店がよくわかんなくって…」
「姉ちゃん、オレが調べてきてやるよ。実際行ってみて。」
私は優斗がいつも行ってる商店街の床屋ではなく、オシャレな美容院に変えたがっていることを知っている。
「優斗が調べてくれると助かるよ。」
「よし、決まりね!母さん、オレ、美容院に行ってくる!」
優斗、見え透いてるよ。バレバレだって。
次の日、お父さんが帰宅したときに、私にドラッグストアのビニール袋を渡してきた。
「私にお土産?ありがとう。なにこれ、シャンプーとリンスと、えっ、育毛剤まで?」
「あら、友香に買ってきてくださったの?わっこれ、こんな高いもの。お父さん、お小遣い足りなくなるんじゃないの?しょうがないわねぇ。これは家計費から出すわ。」
お母さんはお父さんにお金を渡していた。
お父さんがちょっとニヤリとしたような気がした。
後日、この高級シャンプーとリンスと育毛剤を家族全員が使っていることが判明した。
減り方が異常に早く、追及したところ、お父さんはもちろん、女性の薄毛が気になりだしたお母さんと、将来お父さんのように薄くなるのを恐れている優斗まで使っていたのだ。
結局、全員一致で家計費からの支出でこれからもこのシャンプーとリンスと育毛剤を購入することが決まった。
お父さんの姑息な野望は達成された。
私は優斗が調べてくれ、彼に却下された一番安い店で、ロングヘアから十センチ位カットしてもらった。(お父さんにお小遣いをねだりました)
自分ではあまり変わらないと思ったけど、学校に行くと、
「友香、髪切ったの?」
と、結構女子からは気づかれていた。
よし、この先、ダイエットが気づかれそうになったら、髪を切ってごまかすことにしよう。
がんばれ67㎏。
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